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「······挿入()れて······」 「え······?」 「······え?」 驚いた声を上げる言葉に、思わず顔を上げるときょとんとした兄の姿があった。 きっと自分も同じような顔をしているのだろう。 それにしても、何故碧人はそのような顔をしているのだろう。 「葵。今、挿入()れてって言った?」 「え? 僕、そんなこと言った?」 「自分が言ったことを覚えていないだなんて、それほどまでに欲しがっているわけ······?」 口元を緩める。おかしいと笑っているようだった。 指摘されて、かぁと頬が熱くなったが、自分が気づかないうちに口にしたことを慌てて謝罪しようとしたが、それでも兄は嬉しそうだった。 「唇に欲しがっている時と同じだね。今回のは特にそのおねがいを聞くのは叶えられない。それもあと2日我慢すればしてあげるから」 「······うん。我慢する······」 「そう。そうやって言うことを聞いていれば、葵の望むことをしてあげるからね······」 髪の毛を指先で掬うように撫でられる。その仕草がくすぐったくて、身じろぎした。 昨日、心の中で思っていたことを無意識に言ってしまい、怒られるのかと思っていた。実際には、愛しいと言いたげに微笑んでくれた程度で、その反応を見た途端、安堵した。 そして、気持ちの余裕ができたようで、覆われた部分でありながらも昂っているのを浴衣越しで感じた。 「ねぇ、にい······あ······お、とさんも嬉しく感じているの?」 「何のこと?」 小首を傾げて聞き返した。 葵人のことならば、言わずとも分かっているはずなのに、わざとらしく分かってないフリをされてしまった。 直接的な言い方だと羞恥に苛まれてしまうものだから、やや遠回しに言ってしまったのが裏目に出たとでもいうのか。 なわけがない。最初に思った、葵人に恥ずかしいことを言わせるためにそのようなとぼけた言い方をしているに決まっている。

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