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29.
言ってたまるものか。
「あお······とさんは、僕のことならばなんだって知っているって言ってたよね。今、僕が思っていることだってお見通しじゃないの?」
「そうだね。葵人のことならば、なんだって知っているし、分かっているつもり······だった。······目を離した隙に、僕の手から離れるまでは」
目を細める。
瞬間、ゾッとした。
ありとあらゆる方向から一斉に見つめられているような恐ろしい感覚に、目を背けたいのに、かえって怖く感じ、逸らすことも出来なかった。
今となっては、おぼろげとなってしまった外に出ることすら赦されることも、絶え間なく続く罰を与えられたきっかけの出来事。
脅されていることは、いつものこと。ここ数日のうっかり口を滑らせてしまった際にも、空気がピリつくほど兄が静かな怒りを滲ませていて、言うことを聞かざるを得ない状況となっているが、素直に言ってしまいそうになるのを堪えた。
「······あの時は、ごめんなさい。一生赦されることだなんて思ってないよ。ここから出ようとも思わないし、ずっと罰を受けるから。······今はただ、僕が思ったことを当ててくれたら、嬉しい、のだけど······」
身体中が小刻みに震える。オドオドとしてしまって、兄の顔をまともに見れない。こんな態度じゃ、やましい気持ちがあると、神経を逆撫でさせてしまうかもしれない。
態度を改めてないとと、深呼吸をして落ち着かせようとした。
そうしている中でも、間近でただ黙って見つめている気配があると、落ち着こうにも落ち着けない。
かえって、浅くなっていく呼吸に半ば焦り始めていると、「そうなの」と淡々とした返事が聞こえた。
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