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「······ちゃんと自覚するために呼ぶから、聞いてね」 「うん」 にこにこして呼ばれるのを待っていた。 自分で言っておいてなんだが、改めて聞く姿勢でいられると照れてしまって、口ごもってしまう。 僕にとっては、難しいこと。 碧人に言われたことを思い出し、負けたような気がして、ムッとした。 たった一回だけでもいいのだから呼んで、勝ち誇ってみせたい。 小さく深呼吸をして、口を開いた。 「······あ、あお、とさん······」 「うん」 「あお、あお······とさん······」 「うん」 「あ、おと、さん」 「うん」 「······あ······無理······かも」 「そう」 きちんと言えなかったというのに、満足そうに笑みをたたえたままだ。 「ちゃんと言えなかったね。でも、一生懸命呼ぼうとする可愛い葵が見られて、嬉しいな」 言葉通りに嬉しそうに笑う碧人に、瞬間、赤くなった。 そういう意味で笑みを崩さなかったというのか。どちらにせよ、碧人の思惑通りになってしまったようで、悔しい。 「今度こそは、ちゃんと呼んでみせるからっ!」 「ふー······ん。でも、こんな状況で耐えられるかな······?」 「······っ、押し付けないで······っ」 「ふふ、何をかな······?」 余裕たっぷりの笑みを見せつけて、ぐりぐりと押し付けてくる。 恐怖で縮んでいたものの、羞恥で呼べずにいた合間に再び興奮を見せていたモノを、追い討ちをかけるようにそうされるものだから、嫌でも反応してしまう。 もっと言うなれば、碧人は半裸であるものの、昂りは浴衣に隠されており、葵人はというと、一糸まとわぬ姿。そのような格好だと意識すればするほど、限界に達してしまいそうな状況に陥った。 「あ······ぁっ! もう、イッ······!」 無意識のまま、腰を振っていた矢先、動きが止まった。 刹那、強ばっていた身体が解け、碧人に身体を預ける形となった。 息が上がっている葵人の頭を愛おしげに撫でられ、触れられる度に甘美に震えた。 「······我慢できてえらいね。そのまま本能に従順でもいいんだよ······? 悪い子の葵なんだから」 「ふ······っ、ん······」 軽く達してしまったのではないかと思うほどの、あの快感の波を感じていた。 そして、気を張っていたこともあり、葵人はいつしかまどろみの浅瀬に入って行ったのであった。

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