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第3話
「十六夜さん。時雨さん。お帰りなさい。こちらです。
えっとあの、少しいやかなりおかしな業況で」
いつになく歯切れの悪い部下に、凪が首を傾げる。普段なら分かり難くても状況説明をする部下がただひたすら困っている。客間に寝かせたという例の青年の元へ時雨と一緒に向かう。部屋の襖を開けて中を見た凪と時雨は驚きで固まった。普段は姿を現さない白虎が布団に寝かされた彼に寄り添うように丸くなっている。
「白虎」
凪の声に目を開け凪をしばらく見つめたあと、鼻を鳴らした。
「ふん。貴様もたまには役に立つということか」
白虎族の当主になり初めて凪も、時雨も白虎の言葉を聞いた。たまに姿を見かけるだけで、声を聞くことはけしてなかった。先代は白虎と言葉を交わし 人型になった白虎と縁側でお茶を飲んだりしていた。凪は白虎に嫌われていて今まで一度も交流はない。
「やっぱり、俺。嫌われてますか?白虎様」
「嫌いではない。貴様とそこのおまえ。本心が見えぬから苦手なだけだ」
嫌いではないの言葉が凪の気持ちを少しだけ向上させた。本心が見えない。凪も時雨もよく言われる言葉だ。
「わたしは反論できません。白虎様の言葉は事実ですし。
凪はどうですか?」
「聞くんじゃねぇよ。時雨。俺らはどうしたらいい。白虎」
「守れ。もし殺したら四神の呪いがふりかかる」
白虎は目を閉じて何も話さなくなった。
「白虎が守れというなら守る。気にいらねぇな。行くぞ時雨」
「はい」
部下に眠る青年が起きたら教えてくれと頼み部屋を出る。凪の顔は感情も表情すらも浮かんでいない冷たい表情をしていた。
「気にいらねぇな。時雨」
「調べろですか。分かった」
あの青年がなんの目的でどうやって四神に取り入ったのか。怪しい青年を信じられるはずっがなかった。
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