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第5話
ベジタリアンの虎。動けない。命の危険がない。分かって油断してしまった。恭平には言葉を発することしか出来ない。彼と仲良くなるしかない。まず聞きたいのは恭平にとっては一番大事なこと。
「かっカメラどっ何処ですか」
声が震えてしまいまともに話すことが出来ない。情けないけど怖い物は怖い。虎と会話している。怖いと思わない人はいないはず。自分だけだろうか。恭平は誰かに聞いてみたいと思った聞く人いないけど。
「カメラじゃと。これか」
虎のお腹の下からカメラが出てきた。少しだけ体に力が入るようになり、這って少しだけ移動してカメラを手に取った。あれ壊れているかと思ったのに見たところ壊れている様子はない。いつもとカメラが違う。見た目に変化はない。何かが違う。何が違うか分からない。もどかしい。だけど戻ってきて良かった。カメラが無くなったりしたらこの先やっていけなかった。
「良かった……」
「大事なものなんじゃな。大切にしているのが伝わる。
ここの奴らときたら全員が全員嘘つきばかりじゃ」
少しうんざりしているような虎の声に、恭平は共感がもてた。恭平も嘘つきは苦手いや嫌いだ。母親はそのせいで死んだ。父親と継母のせいで。嘘だけは許せない。
「分かります。その気持ち」
ようやく体が動かせるようになり恭平は虎の前で正座した。
「分かるか」
「はい。あっ、えっと。斑鳩恭平です」
「白虎の不知火じゃ。よろしくじゃ」
虎の前足を握り握手。毛がふさふさで肉球がかなり柔らかくて気持ちが良かった。
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