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第8話
白虎家の和風の屋敷とは対照的に洋風の洋館。和風の瓦屋根の屋敷ばかりだからかなり目立つ。年季が入っているけれど大切に使われてきたのか、壁に崩れはあるけれど補修すればまだまだ使えそうだ。恭平は気配を感じていた。
「いる。ここに未練を残した幽霊。不知火さんも行きますか?」
不知火さんがもっと傷付く事になるかもしれない。良い思い出だけを覚えておきたいなら行かない方が良いと思った。ぼくはかなり傷付いたからだ。
「何故聞くのじゃ。行くに決まっているじゃろ」
「傷付く覚悟はありますか?
ぼくは覚悟が無いままに行って、今もまだ後悔しているから」
母の死の真相を知ったときのことを今でも心に残っている。受け入れられていない。母は今もぼくの側を離れない。
「恐れていては何も始まらぬ。行こう」
「このまま乗ったままでいいの?」
「良いぞ。じゃがな扉は開けられないぞ」
「ぼくが開けるから大丈夫」
屋敷の中に入いると、少しくすんだ赤いカーペットが床に敷かれていた。幽霊は屋敷の思い出の強い場所にいることが多い。思念が集まる場所が死んだ者には居心地が良い。
「一番使っていた部屋あるか?」
「それじゃったら「動かないでいただけますか。聖職者として殺しはあまりやりたくありませんので」」
不知火の上から恭平は背後を振り返る。灰色の髪を後ろでくくり、銀縁眼鏡をかけた無表情の男がサバイバルナイフを持ち立っていた。
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