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第9話

「動かないでください。わたしは貴方が動いた瞬間、白虎様に飛び乗り貴方を殺せます。 信じるか信じないかは自由です。わたしが貴方を殺したとき、わたしもこの世にいないでしょうけど。それはそれで仕方ない」 彼は本気で仕方ないと思っている。ぼくを殺せればそれでいい。彼はいつ死んでもかまわないのだ。恭平は振り返ったまま動けなかった。あのぼくを助けてくれたであろう屋敷の人だということは容易に想像できた。勝手に逃げ出したあげく神獣を連れ去った怪しい男。 「あの、これは「黙れ。話す事を許可してはいません。貴方に出来ることはわたしの質問に答えることです」」 「貴様も生意気じゃな。時雨。貴様がこやつを殺す前にわしが殺してやろう」 「貴方がここまで入れ込むなんて、ますます見過ごせません」 睨み合っている。どう考えてもぼくが悪い。どうにかしないと。どうにか。そろそろ首が痛い。2人が睨み合っている隙に、体の向きを進行方向とは逆に向けた。 「不知火さん、時雨さん。落ち着いてください」 恭平の言葉に、時雨さんが顔をぼくに向けた。表情は無表情だったが激怒しているのは分かった。 「元はと言えば貴方のせいでしょう」 「そうですよね。すみません。ぼくが悪い。ぼくが。本当にごめんなさい。ごめんなさい」 不知火の上だということを忘れて、ぼくはその場で謝罪しながら頭を下げ続けた。謝って少し殴られるのを我慢すれば終わる。いつもそうだったから。今だってそれで終わるはずだ。 「おい時雨。貴様のせいですっかり怯えているじゃないか。どうにかするんじゃな」 「わたしがですか」 「すいません。困らせて。ごめんなさい。ごめんなさい」 体が揺れる。不知火さんの上に居たんだぼく。ぐるぐる回ってる。向きが変わった。 「まったく、乱暴ですね。顔をあげなさい。早く。殺されたいですか」 殺されたくはない。まだぼくは死ねないから。顔を上げたら時雨さんがいた。 「えっ、どうやって」 「白虎様が口に咥えてわたしを投げたのですよ。分かりましたか」 「・・・・・・」 「分かりましたか」 「ひっ、わっわかり、分かりました」 「目的をどうぞ」 「もっ目的はなっないです。しら、白虎さんの心軽くさせたかっただけです」 嘘ですね。本当のことを言ってください。時雨さんにばっさり否定された。

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