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第4話
"けい"と名乗る男性を無理やり保護、いや誘拐か?それとも監禁?して3日が経った。副業用の携帯に着信は無いし、彼はあの部屋の鍵を返しにも来ない。全てあの部屋に放置したまま、出ていってしまったのだろうか。
様子を伺いに昨夜アパートの前を通ったが、電気はついておらず、中に人がいるかどうか確認できなかった。
中で命を絶たれていたら、なんて嫌なことが朝から頭の中を支配していて、今日は1日中仕事が手につかなかった。
退勤後急いであのアパートに向かう。合鍵を刺そうとした時、鍵穴の向きで鍵が閉まっていないことに気がついた。やはり出て行ったのだろうか。玄関の扉を開くと、室内の電気はついていないが、ひんやりとした空気が体を包む。
「けいくん、いる?」
暗闇に声を投げかけ、キッチンの照明をつける。
明るくなった部屋には、あの日のまま、同じ姿でベッドに横たわるけいくんの姿があった。
「けいくん」
ベッド脇に置いた水のペットボトルは空になっていて、水分は取っていた事に一安心した。
「ごめんなさい」
横たわったまま涙を流し、謝罪の言葉を溢すけいくんにティッシュを渡す。
知っている、こんな時にどんな言葉を投げかけても、今呼吸をするだけで精一杯の相手には何も届かないことを。
「080-××××-××××」
けいくんは誰かの携帯番号を口にし、ポケットからクシャクシャになった番号の書いてある紙を差し出した。
「誰の番号?」
答えづらいのか、返事はない。
「かけたほうがいいの?」
「…ごめんなさい」
けいくんの頬をゆっくりと流れ落ちていた涙が、急に堰を切ったように溢れ出した。戻りたく無い、けれどもここにもいられない、そんな思いがひしひしと伝わってくる。
「かけてくる」
アパートの部屋を出て、紙に書かれた番号に電話をかける。しばらくのコールの後、品のある声の男性が電話に出た。
「夜分遅くに申し訳ありません。先日けいさんという男性を保護しまして、この番号をけいさんから教えていただいたのですが、お知り合いの方で間違いないでしょうか?」
『間違いありません。この度は慶がご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。私、慶の兄の蘆名歓と申します』
ん?
あしな…かん?あっ!蘆名歓!!?兄???
電話の向こう側に今話題の芸能人の名前が出てきて、つい動揺してしまう。
この声の主が本物ならば、保護した男性は蘆名歓の弟。
「あっ、え、、、はじめまして」
『はじめまして。今弟はどちらにいますか?』
「△△区の〇〇駅からすぐの美咲アパートです」
『車で15分ほどで着く場所に居るので、これから保護しに向かいます』
「あ、はい。よろしくお願いします」
『ご迷惑をおかけし申し訳ありません。もうしばらく弟をお願いいたします』
「はい、こちらはお気になさらず、慌てずゆっくりお越しください」
『ありがとうございます。それでは失礼いたします』
え…蘆名歓が来る……?
ここに……?
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