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第2話
治療を初めて2年目の秋、緒兎は体外受精に成功した。今思えば、それが最初で最後の成功だった。
けれど喜びも束の間、医師からとても信じがたい事実を告げられた。
緒兎の子宮に着床した受精胚は、他人のものである。つまり受精胚の取り違えが起こったのだ、と。
もちろんそれは甚大な医療ミスだ。医師団から謝罪を受けると共に、多額の慰謝料を渡され、その後の中絶も無償で行われた。
緒兎と番の蓮は、泣き続ける緒兎に終始優しく寄り添ってくれたが──それでもなお、失った命の重みは今も緒兎の心をさいなむ。
たとえ他人の受精胚だったとしても、授かった命を水にして本当によかったのか。
問いかける思いは、今日の医師の告知によって決定的な後悔に変わった。
ああ、あの時。最初で最後の妊娠を。
「……産んで、いればっ……」
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