5 / 6
第5話
「……っ、ごめんっ、ごめんね蓮! ごめん……」
「どうして緒兎が謝るんだ。何度も何度も治療で体を傷つけて、痛い思いも嫌な思いも、たくさんしたのは緒兎なのに。
こんなに、ボロボロになるまで俺の子を産もうとしてくれて、ありがとう。だけどもう、充分だから」
「蓮、でも」
「正直言って、俺は少しホッとしたよ。これ以上、緒兎が苦しむところを見ないで済むんだと思ったら」
「れ、……」
「そりゃ、子供は欲しかった。けど俺にとってもっと大切なのは、緒兎が笑ってることだから。二人で幸せになろう。これからは、俺がもっとたくさん緒兎を笑わせるから」
「蓮」
「だから笑ってくれよ、緒兎。希望も──きっと、そう願ってるから」
「……うん」
まだぎこちない笑みしかできない緒兎の頬の膨らみに、幾筋もの涙が伝い落ちていった。
そっと重ね合った唇の熱が、凍えた心を溶かしていく──。
ともだちにシェアしよう!