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第3話
カラオケに行くのは初めてではないが、DVD観戦ができることは知らなかった俺は、潔が全部をセッティングしていた。
「ドリンクもお菓子も用意したし、これなら三時間は持つな」
「……」
お前と三時間も部屋に籠もるのは出来るだけ避けたいが、俺もW杯のDVDには興味があるので大丈夫だろう。
「ボリューム上げるか、凛」
「五月蝿いのは嫌だ」
「はいはい。……こんなもん?」
DVD観戦はブルーロックでのモニタリングルームでするようなことだ、ほぼコイツもサッカー漬けの生活を過ごしているようだ。
「いつも家族の前で見てると、集中して見れなくてさ。凛と見れたら楽しいかと思ってた」
コイツの家族ならヌルいと想像がつく。
甘やかされているに違いない。
集中して画面をみて一喜一憂する潔が視界に入るとイラつくが、嫌なわけじゃない。
サッカー以外でも視線が離せないなんて本当に目障りだった。
「一応糸師冴が出てる試合のDVDも持ってきたんだ。W杯面白くないなら変えるけど、こっちのほうがいいか?」
俺が画面に集中していないからだと思うが、兄貴で俺を釣ろうとしているのが分かると俺のイラつきが増した。
俺はその衝動で潔の身体に伸し掛かり押し倒していた。
「そんなに兄貴に認められたのが嬉しいか?」
怒りもあったが、イラつきのほうが勝っていたと思う。
なんとも言えない感情が俺に湧き上がってきて、俺の手が潔の首を締めはじめた。
「っなんて顔してるんだよ、……凛」
奴の手が俺の頬に触れて気付いた。
大きめな目に写る俺の表情が歪んでいたのだ。
「お前の兄貴を取ろうなんて思ってないからさ」
兄貴に認められた潔にイラつく。
そして俺は潔世一を兄貴に取られると思うとイラつくし、ムカつく。
「俺は凛しか見えないし、冴さんも弟をないがしろにはしない」
首を締めていた自分の両手が無意識に緩め、覆いかぶさるようにキスをした。
潔の息遣いは酸欠で荒れていたが、交わすキスがいつもよりもいやらしく思えた。
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