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第32話 俺は潔世一を愛したい。
潔世一は俺が好きだと言っていた。
だから俺と潔との関係はサッカープレイヤーである限り永遠に続くと思っていた。
だがしかし奴は俺に別れを告げてきた。
俺の兄貴の冴が潔を好きになって、潔は俺よりも兄貴を選んだのだと思った。
認めたくはないが、兄貴と俺の顔は似ていたし、似ているのであればより優しい奴のことを好きになるのにも理解出来る。
結局俺は兄貴には勝てないのだと直感した。
嗚呼、俺の大切な物が俺からすべて離れていくのはきっとそうなるような運命の素にあるからだ。
ならばいっそのこと俺はサッカーに集中すればいい。
やり込んだぶん俺はサッカープレイヤーとして強くなる、そうなればあの憎き兄貴と潔世一を見返せる。
それから俺はもっと貪欲にストライカーを目指して努力に励む生活を過ごすことにした。
そして潔の調子も頗る良くなっていったし、結局のところ俺への想いは重荷だったんだろうと気付けた。
俺にとって汗を掻く潔世一は目の毒だ、性行為の後の奴を思い出しては身体の芯が熱くなったことも少なくはない。
何事もなくぶつかり合える奴の心はまるで鋼だと思った。
俺のことを忘れたかのように喰い合う姿はまるで記憶を無くした別の潔のような気がした。
結局俺は奴を未練タラタラのクソ野郎だった。
「……クソッ」
潔世一に恋い焦がれて仕方のない一人のただの男に違いなかった。
奴への憎悪は一気に増していった。
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