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第35話

ブルーロックプロジェクト最終日、羽田空港の国際線ターミナルで関わりの持つプレイヤーが世界各国に散り散りになる時間が近付いてきた。 予告通り俺のスマホに兄貴からの着信があった。 『イヤフォンを付けろ、話を聞け』 兄貴はただそれだけ言うと、布擦れ音が聞こえた。 きっとスマホを上着の内ポケットに仕舞った音だと気付いた俺は、そのまま聞いた。 『世一』 兄貴が潔を呼ぶ声はとても甘ったるい、そして優しい声色だった。 『この日を待っていた』 そしてその声色で、兄貴が潔をどれだけ大切にしているかということにも気付いた。 こんなに甘ったるい兄貴を奴はどう見ているのか分からないが、幸せには違いないだろうと思った。 『やはり愚かだな』 愚弄する言葉すら甘ったるいが、何故ここでこんな言葉が出てくるのかと理解ができなかった。 『これからお手柔らかにお願いするよ、冴』 潔の声を拾った瞬間また布擦れの音が聞こえて、何事かと思って、ちらりと後ろを振り返ると、兄貴が潔を抱き寄せていた。 人前でこんなことができる兄貴はプレイボーイなのだろう、そんなことを考えていたが半分は奴に何をする予定なのかの不安が立ち込めていた。 『辛かったな』 『……俺の想い人が冴だったなら、こんな辛い思いはしないで済んだのにな』 『俺が凛のことを忘れさせてやる』 そこで我に返った。 兄貴は潔はまだ俺が好きだと言っていたことを思い出した。 ここで肯定の言葉が出てきたら、俺はイヤフォンとスマホを捨て、この二人を殴ってやろうと手に力が入ったが。 『冴ごめん、その気持ちには応えられない。……俺はやっぱり凛が好きなんだ』 苦しそうなその潔の声は震えて聞こえてきた。 その声を聞いたら俺もただごく普通の男だ、振り返り兄貴に抱きしめられている潔の片腕を引っ張り二人を離した。 「……え?!凛っ」 「クソ潔、お前は心底ムカつく」 こんな衝動に駆られたのは初めてで、俺はそのまま潔を抱きしめた。 「一度だけ言ってやる。……俺は潔世一が好きだ」 耳元でそう囁いてやったら、奴の顔色は見る見る間に赤く染まり上がった。 「え?!待ってくれよ、俺は全く意味が分からないんだけど」 「兄貴で俺に似ていたとしても、浮気したら殺しにいくから覚悟しろ」

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