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人生チョロい
今までは、毎年、夏休みは、同じ地元の県立高校の仲間たちと一緒につるんでは、遊んでいた。柳人も、俺も、その仲間の中にいた。
地元は港街だ。
高校の裏手の、ささやかな高級住宅街の向こうには、堤防があって、松林の先には砂浜が広がり、波の穏やかな、海水浴場がある。
俺たちは、いつもばか騒ぎしては、ハメをはずして陽気にやっていた。それが、いつもの俺たちの夏だった。
人生は、夏のように、イージーモードだ。
少し緯度の高い俺たちの街は、少しだけ東京より昼が長い。長い冬から急激にやってくる短い夏を、俺たちは愛しむ。
不意にやってくるシロッコのような熱風は、ぐんぐん上がる体温計のように、俺たちを、刹那的なバカ騒ぎへと駆り立てる。
こんな風にいつでも、てきとうに、うまくやっていけると思っていた。このまま、俺たちも、俺たちの関係も、何も変わらないと、俺は、信じて疑わなかった。
地元の高校から地元の大学に進学して地元で就職する。二十代で地元出身の女の子と職場結婚して、子どもは二人。貯金して四十代で郊外に家をローンで建てて。子どもはまた地元の学校に行って。それが永遠に続く。
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