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失ってから気づくもの
俺は、スマホを握りしめた。暗くなったスマホの画面を見て、俺は、持っていたスマホを地面に叩きつけてやりたかった。
何でだよ! 何で言ってくれなかったんだよ!
今は、高校時代の仲間も、みんな東京や、ほかの地域の大学に行ってしまった。みんなばらばらになった。残ったのは、俺と柳人だけだった。
だから、今年は、柳人と二人で花火を見ることになるな、と思っていたんだ。なのに何だよ!
『花火の写真、送って』
だって?
どうしてだよ。どうして、何も言ってくれなかったんだよ。
言いたいことは、百もある。あいつをなじり倒したい。
行くもんか! 花火大会になんか、行くもんか! 一人で花火大会に行って、一人で花火を見て、何が面白いんだよ。俺は、柳人と見たかったんだよ!
俺は、柳人が、俺にとって、かけがえのない人だったことに、今さらながら気づく。
いや、違う。ほんとうは、自分の気持ちになんか、とっくに気づいていた。いつから? たぶん、柳人と初めて会った日から。
俺は、おそらく、俺の気持ちを知っていた。でも、どうにもならないものだから、俺は、その気持ちを、永遠に言うつもりは、なかった。
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