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花火
海にしつらえられた発射台から、一発の花火が打ち上がる。暗い夜の虚空へ向かって放たれた軌道は、まっすぐに宙を切る。
そして清らかに、花開く。一瞬のきらめき。星くずが、暗い夜空を、暗く深い海へと落ちていく。漁火 のように。
唇に潮風の味がする。
砂浜へ続く階段に座った俺の耳に、海辺の仮設ライブハウスの、アメリカンな音楽と、人々の陽気なさざめきが聞こえる。
砂とビーチサンダルの足と笑い声。ウッドデッキ。白いペンキ。
誰も俺のことなんか気にしていない。夜の闇が、頬をつたう一筋のしょっぱい海水を優しく隠してくれる。
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