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お話し合いと雰囲気作り()
「中々いい車だよな」
「正面いい顔してるし、走りはどうなんだろ」
京介の興味はやはり走行性。
「ちょっと行ってくるか。でかい赤ん坊に「ふらわあ」のパンでも買ってきてやろう」
まあつまり、銀次にも報告に行こうという。
「忙しくなければいいな」
「おおーなめらか〜〜」
アクセルを踏んで、ウインとも言わず進んでいく。
「静かだな」
助手席のまっさんが、ダッシュボードの辺りを色々捜索。
「へえ〜色々あんなぁ てかお前免許証持ってきてんの?」
思い出したように聞いてみるが、
「あるよ、いつも財布に…」
今着ているのはお泊まり仕様の半パンツ。
「降りろ」
即座に下ろされてドライバー交代。
「ああ、いいな走り」
まっさんも走行性には満足だ。
『ふらわあ』の駐車場にいれ店に入ると、即座に銀次が顔を出した。
「お前ら乗ってきたの誰の車?新車じゃね?」
「そのことで話があんだよ。店終わったらてつやんち来てくれよ」
「わかった。クリームパン今焼き上がったから持ってけば」
『ふらわあ』一番人気のクリームパン!しかも焼きたて!
「サンキューいいタイミングだったな。でかい赤ん坊喜ぶぞ」
2人は相当もてあましていたらしい。まあ気持ちは本当にわかるんだが。
あとは適当にパンを見繕って、まっさんの会計でパンを購入
駐車場に行くと、
「それ今年の新型じゃねーの?随分思い切ったな。結構するはず」
と銀次がクリームパン焼けた後のちょっとの休憩に出てきていた。
「そうそう、それが騒動の元なわけよ」
「騒動なんだ」
面白そうに銀次は笑うが、ちゃんと話を聞いたら絶対笑えない。
「じゃ、後でな」
「おう」
2人は駄々っ子のアパートへ帰って行った。
「ほれ、銀次んとこのパン買ってきたぞ」
「って寝てんぞこいつ」
駄々を捏ねて泣き喚くうちに寝入ってしまう2歳児はよくみるけれど…
「腹立つわ〜起きろ!パン買ってきたぞパン!昼飯食ってないなら昼飯だ!」
てつやにしてみたら現実逃避。起き上がって車検証みたらまたどんよりするのだろう。
インスタントコーヒーの用意をして、マグカップと電子ケトルをテーブルにおく京介。
「1分おまち〜」
その間に、パンをつまみつつ
「てつやベルファイアが欲しいんだってよ」
「あんなんヤクザかヤンキー上がりの…」
そこまで聞いて京介が噴き出す。
「俺と同じこと言ってるわ、なあ?聞こえたか?てつや。一般人の認識はこんな感じだぞ」
「うるせえ、自分が欲しい車に乗って何が悪いんだよ」
クリームパンを即座に手に取り一口齧る
「うわ!何これ出来立てじゃん!うまっ」
そしてクリームパンで機嫌が治る。
「少しは落ち着いたか?」
そしてチョココロネは正義。
「ん、まあ…。ディーラーには返せなくてもさ、やっぱ横山のおっさんには返すわ」
ちょっとは冷静に考えたらしい。文ちゃん家(ち)は今車5台くらいあるらしいけど、そこに一台増えたところで変わんないだろう、という理屈。
は、ちょっと違うかもだけど、まあそれでいいとはみんな思っていた。
「後な…」
まっさんが続ける。
「てつやのことも、そろそろわかってもらわねえとかなって思ってる」
てつやと京介の目が合う。
「いつまでも期待持たせてると、こういう事態がこれからも起こりそうでさ…2人が嫌なら強制はしないけど、まあ取り敢えずてつやには相手ができたことを伝えたら、文父も色々考えるんじゃねえかなあ、と思うんだけどどうだろう?」
「そう言うのって、ちゃんと口頭で言うのか?ちょっと言いにくくね?」
「確かにな」
京介も苦笑する。
「例えばさ、車返しに行った時に、お前ら2人並んで座って手握り合ってるとか」
「無理無理無理」
「無理…」
「だよなぁ…どうしたら伝えられるかな…」
いや、あんまり広めたくはないけど…
そんなことを考えている時に、まっさんの携帯がなった。
「あ、お袋だ。なに?」
しばし話してから電話を切り、
「ちょっと客だって、行ってくるな。その話はまた今夜にでも。考えとけよ?」
まっさんは急ぎ帰って行く。
「考えとけって言ったってなあ…」
しばし沈黙が流れる……
「めんどくせーことって、なくならねーよな…」
うんざりした顔でてつやが畳に寝転ぶと、京介も仰向けに寝転ぶ。
「ま、一個一個潰していくしかねえな。取り敢えずは車返そうぜ」
「だな…」
そのまま2人は、2.3言話した気はするが、午後2時。お昼寝突入してしまっていた。
目が覚めた…と言うか起こされたのは、まっさんと銀次がどかどかと入ってきた音だった。
「起きろ〜〜、売れ残りのパンと弁当とビールの到着だぞ〜」
「え…今何時…」
寝ぼけ眼で起き上がったてつやは、尻のポケットの時計を見てーうわっ…ーと小さく驚いた。もう19時だ。
京介は横を向いただけで目も覚さない。
「なにこいつ。こんなに寝起き悪いっけ?」
銀次が揺さぶっても
「ん〜」
しか言わない。
「平日は毎日残業みたいだからな。疲れてんじゃね?寝かしとこ。それより弁当何?」
ー土日は大抵寝てるしーと付け加えて、てつやは弁当の内容を気にし出した。
「唐揚げと、幕の内と、カツ丼と、生姜焼き かな」
「俺幕の内〜」
寝ているはずの京介が手を挙げた
「なんだ起きてるんじゃん、お前幕の内がいいの?」
「他にいなければ…」
「ああ、いいぜ。じゃ京介幕の内な」
銀次が、京介の起きたら座るであろう場所へ幕の内を置いて緊急集会開催。
「はあ?あの車文父からのプレゼントなんか」
カツ丼を頬張って、銀次が驚いていた。
「やる事でかいなぁ」
「感心してる場合じゃねえよ、そんなん貰えねえだろ普通に」
唐揚げを誰かの何かと交換したそうなてつや。
「で、どう言う結論になったんだ?」
まっさんは孤高にカツ丼を頬張っている。
「いや、だから車は返しに行くよ?」
「そうじゃなくてお前らの事」
「こいつらの事?」
銀次がまっさんを見る。
「うん、文父がこいつらのこと知れば、これ以降こんな騒ぎ起こらないんじゃないかってさ。いつまでもてつやにいい顔したいおやじなんだろうから」
「ああ、そう言うことね。まあ確かにそれは言えるかもだな」
「だからそれをさ、どう伝えたらいいのかって」
まっさんの言葉にも、京介は黙々と幕の内を食べている。
「それに関してはさ、今回の車と一緒にカタをつけなくてもさ、って思う…んだけど」
まっさんの目線に言葉尻すぼみてっちゃん。
「一編にやっちまおうぜ。また後でなんてやってると今度はなんかされるぞ」
それは勘弁…。
「やっぱそう言うのってさ、言うとかじゃなくて雰囲気じゃねえ?」
銀次がまたおかしなこと言い出した。
「なに、雰囲気って」
てっちゃん嫌な気しかしない。
「なんて言うかこう…お邪魔する前に一回…こうさあ…」
言いにくいなら言うな、とまっさんにどつかれ
「判れよ!」
と顔を赤くして逆ギレ
密かに詰まらせかけたてつやと京介は、ビールで流し込み作業を同時に行っていた。
「バカ言うなよ。そんなんで最初をやりたくねえ…あれ?」
「それを待ってるこっちだっ…ん?」
「え?」
「馬鹿野郎がいるわ…」
京介のみ頭を抱える勢い。
「馬鹿正直に言ってんじゃねえよ、ばかやろ」
あぐらを書いていた足を解いて、右側に座っていたてつやを横から踏みつける。
「「『まだ』やってねえの??」」
流石にまっさんも銀次もびっくりだ。
「気持ちが落ち着いたら、それで満足しちゃって」
タハーって顔しててつやが言うのを、京介が警戒していると
「でも、ふたりで…あむっ」
ほら来た…なんでも喋りそうだから、京介は大きめに切られた卵焼きをてつやの口に突っ込んでやった。
「ふたりで、なになに?」
「おめーらも!いいから!そこから先聞くんだったら、お前らの性生活言ってから言えよ」
てつやの口に今度はミートボールを突っ込んで半ば威嚇。
「おれらのなんてなぁ〜」
まっさんと銀次で顔を見合わせて『ねー』って頷きあう。
咀嚼し終わったてつやがもう面白がっちゃって、ちゃんと逃げる態勢を整えてから
「こいつな、すっげーんだよ!エロく…」
「犯す!」
「うそうそうそ!やめて』
逃げて行ったてつやを追って、ベッドのある方の部屋へ2人で走り去る。
「なんかさ…」
「うん…」
「これからはイチャイチャ見せられるの生放送なんだなぁ…」
ほっこりした顔をして2人は最後のお肉を口に入れた。
ちなみに怖いもの見たさで覗いたら、てつやがチョークスリーパーをかけられてタップが効かなくて落ちそうになっている。
「おいおいおい、やめとけやめとけ」
仲裁に入ったのは言うまでもないことであった
まあ取り敢えずは車を返すことを先にして、てつやのことは後回しという結論に達した。
一緒に済ませてしまう方がそれはいいかもしれないが、いかんせん…色々あってちょっと後回し。
文治経由で連絡を入れたところ、明日日曜なら時間が取れると言うことで急遽明日の午後2時にバットマン邸へ行くことになってしまった。
「銀次は時間取れんのか?俺は日曜だから休みだけど」
「取るんだよ。時間区切ってでも」
いっぺんに事を終わらせたい銀次は燃えている。いざとなったら俺が言うって言う感じ。
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