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◇
「もしかして、郡司龍蔵さん?」
ビシッ! と音がしそうな勢いで龍之介を指差して、少年の瞳が輝く。
「龍蔵は俺の祖父だが……」
「ってことは、お孫さん? じゃあ、あながち間違ってもいないっすよね!」
少年が得意げに胸を張る。
「爺さんを知ってんのか?」
「会ったことはないけど、婆ちゃんからいろいろ聞いてましたから。……あ、そっか。婆ちゃんが若い頃の知り合いなんだから、龍蔵さんも今はお爺さんか」
間違いに気づいて、少年があははと照れたように笑った。
「それで、えっと……お名前は?」
「郡司龍之介だ」
「龍之介さんですね。俺は榊幸人 っす。龍之介さんは、なんでこんな辺鄙な場所に?」
幸人が首を傾げると、淡い金髪がさらりと揺れる。
「本当はお前の婆さんに用があったんだ」
「ってことは、オバケの仕事ですかね?」
「オバケかどうかは分かんねぇが、人を探してほしい。姪っ子が行方不明になっちまってな……。テレビとか新聞とか見てねぇか? 連続神隠し事件なんて呼ばれてんだが」
「ごめんなさい、今そういうの禁止されてるんで。最近のは全然分かんないっす」
「なんだ、試験勉強か?」
「え? 学校ならもう卒業しましたけど」
「高校は?」
「……あの、俺、十八ですよ? 」
龍之介が沈黙する。
幼い顔立ちとその雰囲気からして、幸人は中学生くらいだろうと思っていたのだ。
「……すまん」
「あ、いえ。よく子どもっぽいって言われるんで。気にしないでください」
幸人が気を遣った笑みを浮かべて、少し気まずい思いをする。
誤魔化すように小さく咳払いをしてから、龍之介が再度話を切り出した。
「途中で出会った婆さんが、お前も霊能力者だって教えてくれてな。人探しは出来るのか?」
「犯人が人間なら難しいかも……。とりあえず現場に行ってみないと分かんないっす」
「なら、一緒に来てくれ」
突然の申し出に、幸人が驚いた表情でたじろいだ。
対する龍之介は、顔色一つ変えずに幸人を見ている。
「え、今すぐですか?」
「今すぐだ」
「それはちょっと、和尚さんに相談しないとなんとも……」
幸人がちらりと本堂を見やる。
それはそうだ。高校を卒業しているとは言っても、幸人はまだ子どもだ。
連れ出すのに親の許可は必須だろう。
「和尚はどこに?」
「案内します」
跳ねるように駆け出した幸人の後に、龍之介がついて歩く。
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