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「もしかして、郡司龍蔵さん?」  ビシッ! と音がしそうな勢いで龍之介を指差して、少年の瞳が輝く。 「龍蔵は俺の祖父だが……」 「ってことは、お孫さん? じゃあ、あながち間違ってもいないっすよね!」  少年が得意げに胸を張る。 「爺さんを知ってんのか?」 「会ったことはないけど、婆ちゃんからいろいろ聞いてましたから。……あ、そっか。婆ちゃんが若い頃の知り合いなんだから、龍蔵さんも今はお爺さんか」  間違いに気づいて、少年があははと照れたように笑った。 「それで、えっと……お名前は?」 「郡司龍之介だ」 「龍之介さんですね。俺は榊幸人(さかき ゆきと)っす。龍之介さんは、なんでこんな辺鄙な場所に?」  幸人が首を傾げると、淡い金髪がさらりと揺れる。 「本当はお前の婆さんに用があったんだ」 「ってことは、オバケの仕事ですかね?」 「オバケかどうかは分かんねぇが、人を探してほしい。姪っ子が行方不明になっちまってな……。テレビとか新聞とか見てねぇか? 連続神隠し事件なんて呼ばれてんだが」 「ごめんなさい、今そういうの禁止されてるんで。最近のは全然分かんないっす」 「なんだ、試験勉強か?」 「え? 学校ならもう卒業しましたけど」 「高校は?」 「……あの、俺、十八ですよ? 」  龍之介が沈黙する。  幼い顔立ちとその雰囲気からして、幸人は中学生くらいだろうと思っていたのだ。 「……すまん」 「あ、いえ。よく子どもっぽいって言われるんで。気にしないでください」  幸人が気を遣った笑みを浮かべて、少し気まずい思いをする。  誤魔化すように小さく咳払いをしてから、龍之介が再度話を切り出した。 「途中で出会った婆さんが、お前も霊能力者だって教えてくれてな。人探しは出来るのか?」 「犯人が人間なら難しいかも……。とりあえず現場に行ってみないと分かんないっす」 「なら、一緒に来てくれ」  突然の申し出に、幸人が驚いた表情でたじろいだ。  対する龍之介は、顔色一つ変えずに幸人を見ている。 「え、今すぐですか?」 「今すぐだ」 「それはちょっと、和尚さんに相談しないとなんとも……」  幸人がちらりと本堂を見やる。  それはそうだ。高校を卒業しているとは言っても、幸人はまだ子どもだ。  連れ出すのに親の許可は必須だろう。 「和尚はどこに?」 「案内します」  跳ねるように駆け出した幸人の後に、龍之介がついて歩く。

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