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1-5.質問タイム

「それじゃ、俺から質問しますから!」 「おう、なんでも聞け」  どんな質問をしようかと腕を組んで悩んでいた幸人が、龍之介を見上げた。 「龍之介さんって、お金持ちの人ですか?」 「金持ちだったらどうすんだ?」  意地悪く聞き返せば、幸人が不機嫌そうに頬を膨らませる。  その頬を突いてやれば、ぷぅ、と空気が漏れた。 「フグがいるなぁ」 「もー! 俺で遊ばないでください! あと質問に質問で返すのもダメです!」 「悪りぃ悪りぃ、ついからかいたくなっちまった」  ポンポンと頭を撫でてやれば「子ども扱いしないでください」と幸人がそっぽを向く。 「ま、金には困ってねぇよ」 「さっきの車って、高いやつっすよね?」 「目ざといな」 「婆ちゃんにチャンスと金づるは逃すなって言われてますから」  身も蓋もない言い方に思わず笑う。  どうやら自分は金づるにカウントされたらしい。  榊朱鷺子、想像していたよりも豪快な人だったのかもしれない。 「次は俺の番だな。お前、どうして俺を見て爺さんだと思ったんだ」 「かなり珍しい体質の人だって聞いてたんで。龍之介さんも同じっぽいし、そうなのかなーって」 「珍しい体質?」 「龍之介さん、病気したことないでしょ」 「ないな」  龍之介が頷く。  思い返してみても、幼い頃から大病はもちろん、風邪の一つもひいたことがない。  頑丈であることは取り柄だ。 「生命力が強いって言うんですかね? 病気しないし、オバケにめちゃくちゃ強いし。なんなら殴れると思います、オバケ」 「って言われてもなぁ。そもそも幽霊なんか一度も見たことないぞ?」 「それなんすよ。龍蔵さんもオバケにめっちゃ強いけど、見えない人だったから。婆ちゃんが強制的に見せてたらしいです」 「んなこと出来んのか?」 「出来ますよ」  さも当たり前のように、幸人がさらりと答える。  これまでの人生の中で、龍之介は幽霊なんてものを一度も見たことも、感じたこともないのだ。  なんなら、存在しないと思って生きてきた。  だのに、急にその存在が浮き彫りになって、少々困惑する。 「ラジオの周波数合わせるようなもんなんで、俺でも出来るんすけど……。龍之介さん、見たい?」  瑠璃色の瞳が、ジッと龍之介を見つめる。  心の奥まで見透かすような、試すようなその視線を真っ向から受け止めて、龍之介がニヤリと口端をつり上げた。 「俺は自分の目で見たものしか信じねぇ主義だ。お前が本当に幽霊を見せられるっつーなら、やってみろよ」 「分かりました。後悔しないでくださいよ?」 「幽霊程度でんなもんするかよ」  幸人が挑発的に笑って、龍之介に手を差し出した。

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