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「俺が本物だって分かったところで、次の質問にいきましょー!」 「そうだな……。お前、俺がいなかったらどうやって逃げるつもりだったんだ?」  今でこそ、こうして新幹線に乗って村を離れているわけだが……。  もしもタイミングよく龍之介が現れなければ、幸人はどうするつもりだったのか?  疑問に思って聞いてみる。 「一応、和尚さんの親戚の家に行く予定だったんすけど……まぁ、うまく行くと思ってなかったんで。適当に観光して、迎えが来たら帰るつもりでした」 「帰るって、村に戻れば生贄にされるんだろ?」 「はい。っていっても、すぐに死ぬわけじゃないんで。儀式をして、供犠として仕事をして、村で土砂崩れとか日照りみたいな悪いことが起こったら、埋められる感じっすかねぇ」  さも他人事のように語る幸人を見て、龍之介が眉をしかめる。 「怖くねぇのか?」 「そりゃ怖いっすよ。痛いのも苦しいのも嫌だし。けど、みんな喜んでくれるから、それでいいかなーって」  眉尻を下げて幸人が笑う。  その表情に含まれる諦めの色を見て、龍之介の胸にモヤモヤとしたものが広がった。  行き場のないその感情を乗せて、乱暴に頭を撫でてやれば、小さく驚きの声を上げて幸人が身をすくめる。 「ガキが人生諦めてんじゃねぇよ」 「……だって、夢なんか見てもしょうがないでしょ? 生まれた時から全部決まってたんだし」  言いながら、幸人が瞳を伏せた。  まつ毛が白い頬に影を落とす。  今まで明るく振る舞っていた少年が、初めて見せる憂いを帯びた表情。  なんとかしてやりたくなって、龍之介は口を開いた。 「俺がいれば、連中も簡単には手出し出来ねぇさ。ちゃんと守ってやるから安心しろ」 「……でも、迷惑じゃないですか?」 「んなわけあるか。ガキ一人の面倒見るくらい、どうってことねぇよ」  安心させるように笑いかけて、今度は優しく撫でてやる。  ついでに乱れた髪を直してやれば、幸人がくすぐったそうに瞳を細めた。 「龍之介さんって優しいんですね」 「なんだ、今さら気づいたのか?」  冗談めかして言えば、幸人も笑う。 「やりたいことがあるなら言えよ、なんでも手伝ってやるから」 「あ、じゃあ……アイス食べたいです!」  やって来た車内販売を見て、幸人が言った。

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