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◇
「俺が本物だって分かったところで、次の質問にいきましょー!」
「そうだな……。お前、俺がいなかったらどうやって逃げるつもりだったんだ?」
今でこそ、こうして新幹線に乗って村を離れているわけだが……。
もしもタイミングよく龍之介が現れなければ、幸人はどうするつもりだったのか?
疑問に思って聞いてみる。
「一応、和尚さんの親戚の家に行く予定だったんすけど……まぁ、うまく行くと思ってなかったんで。適当に観光して、迎えが来たら帰るつもりでした」
「帰るって、村に戻れば生贄にされるんだろ?」
「はい。っていっても、すぐに死ぬわけじゃないんで。儀式をして、供犠として仕事をして、村で土砂崩れとか日照りみたいな悪いことが起こったら、埋められる感じっすかねぇ」
さも他人事のように語る幸人を見て、龍之介が眉をしかめる。
「怖くねぇのか?」
「そりゃ怖いっすよ。痛いのも苦しいのも嫌だし。けど、みんな喜んでくれるから、それでいいかなーって」
眉尻を下げて幸人が笑う。
その表情に含まれる諦めの色を見て、龍之介の胸にモヤモヤとしたものが広がった。
行き場のないその感情を乗せて、乱暴に頭を撫でてやれば、小さく驚きの声を上げて幸人が身をすくめる。
「ガキが人生諦めてんじゃねぇよ」
「……だって、夢なんか見てもしょうがないでしょ? 生まれた時から全部決まってたんだし」
言いながら、幸人が瞳を伏せた。
まつ毛が白い頬に影を落とす。
今まで明るく振る舞っていた少年が、初めて見せる憂いを帯びた表情。
なんとかしてやりたくなって、龍之介は口を開いた。
「俺がいれば、連中も簡単には手出し出来ねぇさ。ちゃんと守ってやるから安心しろ」
「……でも、迷惑じゃないですか?」
「んなわけあるか。ガキ一人の面倒見るくらい、どうってことねぇよ」
安心させるように笑いかけて、今度は優しく撫でてやる。
ついでに乱れた髪を直してやれば、幸人がくすぐったそうに瞳を細めた。
「龍之介さんって優しいんですね」
「なんだ、今さら気づいたのか?」
冗談めかして言えば、幸人も笑う。
「やりたいことがあるなら言えよ、なんでも手伝ってやるから」
「あ、じゃあ……アイス食べたいです!」
やって来た車内販売を見て、幸人が言った。
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