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「で、あの手袋はなんだったんだ?」
「婆ちゃんが龍蔵さんのために作った、護身用の手袋だと思います。なんていうか……防御力・攻撃力アップのバフ装備みたいな?」
幸人が見た限りでも、霊的なものからの影響を受けにくくするための守護、龍蔵の特異体質を強化し、霊的なものに対する影響力をあげる術が掛けられていた。
あれならば、特に幽霊に対して強く出ることが出来るだろう。
オバケの仕事をするにはもってこいだ。
「龍之介さんって、喧嘩は強いですか?」
「まぁ、それなりにな」
幼い頃から、ヤクザの息子というだけで、ガラの悪い連中に絡まれることが多々あった。
大人になってからも、こんな仕事をしている以上、いつ抗争や襲撃に遭うかも分からない。
自分の身くらい自分で守れなければ、この世界では生き残れないのだ。
「じゃあ、俺のボディーガードになってくれませんか?」
「元よりそのつもりだぜ?」
その提案に悩むことなく返せば、幸人が不安げに龍之介を見る。
「龍之介さんが思ってるボディーガードとは、ちょっと違うんすけど……。人間だけじゃなくて、オバケからも守ってほしいんです」
「そういえば、俺なら霊を殴れるとか言ってたな」
「はい。俺はまだ半人前なんで、荒事は苦手で……。龍之介さんが前に出てくれたら、その隙にいろいろ出来るかなぁって」
「……要するに、盾になれってことだな?」
「あ、バレました?」
幸人が悪びれる様子もなく、えへへと笑う。
霊と喧嘩をするという感覚は、いまいち龍之介には分からない。
実体の無いものに、本当に触れることが出来るのか? ましてや、ダメージを与えることなど可能なのか?
身近に前例はいるが……龍蔵が霊能力者と組んで仕事をしていたなんて、数日前に初めて聞いたばかりなのだ。
「ま、幽霊だろうが人間だろうが変わりゃしねぇよ。やれることはやってやる」
「ありがとうございます。そのかわり、龍之介さんのことは俺が責任を持って守りますから!」
幸人が自信満々に胸を張る。
面と向かって守ってやる、なんて言われたのは何年ぶりだろうか?
少しばかり気恥ずかしく思いながら、龍之介は黄色の頭をポンポンと撫でた。
正直に言ってしまうと、人間だろうが幽霊だろうが、腕っぷしでなんとか出来るのなら、自分の方が幸人よりも上手く対処出来るのでは? と龍之介は考えている。
だが、幸人が使う奇妙な術や、千福万福の存在は未知数だ。
お互いの力を合わせれば、より効率的に事を進められるだろう。
「だから、大船に乗ったつもりでいてくださいね?」
「あぁ、頼りにしてるぜ」
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