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◇
幸人からソックスガーターを受け取ると、手を引いて椅子に座らせる。
それから、龍之介は幸人の足元に跪いた。
ハイソックスの口ゴム部をクリップで挟み、ベルト部分を膝下で止める。
「キツくないか?」
「大丈夫です」
両足にソックスガーターが着くと、幸人は椅子から立ち上がった。
歩いてみたり、ぴょんぴょんと飛び跳ねたりして感触を確かめる。
「龍之介さん、靴下全然ずれないっすよ!」
上機嫌に笑う幸人を、上から下までまじまじと龍之介が見下ろす。
しなやかな生地で作られた白いワイシャツ。
膝上丈のショートパンツからすらりと伸びる白い脚には、ハイソックスとソックスガーター。
飾りボタンの付いたローファーも、控えめに幸人の足元を彩っている。
少しばかりフェチを感じないわけではないが、本人が気に入っているようだから良しとする。
「今着ているものを色違いで五着ずつ用意してくれ」
「承知しました」
「え、そんなに買うんですか?」
「当たり前だろ、これから毎日着るんだからな」
何やら龍之介が店員と話をして、黒いカードを取り出した。
急に金額のことが気になりだして、幸人はハンガーラックにかかったワイシャツの値札をこっそり確認する。
そして、想像していたよりも額が大きいことに驚いて、ギョッと目を見開いた。
龍之介は上から下まで五着ずつ服を購入したのだ。
いくらになるか大体で計算して、幸人の手が震える。
「龍之介さん……! これ、すっごく高いんですけど……!」
幸人が慌てて袖を引けば、龍之介はきょとんとした表情をする。
「んなことねぇよ、こんなもんだ」
「で、でも……」
戸惑うように瞳を揺らす幸人を見て、龍之介が笑った。
そして、身を屈めて深い青の宝石が付いたループタイを首にかけてやる。
「やっぱり似合うな」
幸人の瞳と同じ色の宝石を見つけて、気がつけば一緒に購入していた。
こうして幸人の胸元で輝いていると、まるであつらえたようにしっくり来る。
「あの……龍之介さんは、なんでこんなに良くしてくれるんですか?」
「理由がないと不安か?」
幸人がこくりと頷く。
どうして昨日会ったばかりの他人に、ここまで惜しみなく金をかけられるのだろう?
村では献金や貢ぎ物を持ってくる者は、必ず祈祷や厄払いといった見返りを求めてきた。
だが、龍之介は結奈の捜索以上のことを、幸人に一切求めない。
ただただ与えられるという経験が少ない幸人からしてみれば、この状況でどう振る舞うべきか分からなかった。
「そうだな……。俺はお前が気に入った、それじゃダメか?」
「ダメじゃないっすけど……。じゃあ、俺は龍之介さんに何を返せばいいですか?」
「たくさん笑って、怒って、泣けばいいんだ。俺はお前が何を考えて、何で心が動くのか知りたい」
龍之介が幸人の白い頬を撫でる。
最初は仕事上の関係、次に同情へと変わった感情は、新たに興味へとその形を変えた。
幸人が何で喜び、何で涙を流すのか。何を好み、何を険悪するのか。
どんな些細なことでもいい、知りたくて堪らない。
熱の籠った視線を受けて、幸人がふいと横を向く。
「そんなの、お礼にならなくないですか?」
どこかぶっきらぼうな口調で言うが、その頬は薄紅に染まっている。
「礼がしたいんなら、抱き枕になってくれればいい。お前には安眠効果があるみたいだからな」
悪戯に笑って、龍之介が言った。
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