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 幸人からソックスガーターを受け取ると、手を引いて椅子に座らせる。  それから、龍之介は幸人の足元に跪いた。  ハイソックスの口ゴム部をクリップで挟み、ベルト部分を膝下で止める。 「キツくないか?」 「大丈夫です」  両足にソックスガーターが着くと、幸人は椅子から立ち上がった。  歩いてみたり、ぴょんぴょんと飛び跳ねたりして感触を確かめる。 「龍之介さん、靴下全然ずれないっすよ!」  上機嫌に笑う幸人を、上から下までまじまじと龍之介が見下ろす。  しなやかな生地で作られた白いワイシャツ。  膝上丈のショートパンツからすらりと伸びる白い脚には、ハイソックスとソックスガーター。  飾りボタンの付いたローファーも、控えめに幸人の足元を彩っている。  少しばかりフェチを感じないわけではないが、本人が気に入っているようだから良しとする。 「今着ているものを色違いで五着ずつ用意してくれ」 「承知しました」 「え、そんなに買うんですか?」 「当たり前だろ、これから毎日着るんだからな」  何やら龍之介が店員と話をして、黒いカードを取り出した。  急に金額のことが気になりだして、幸人はハンガーラックにかかったワイシャツの値札をこっそり確認する。  そして、想像していたよりも額が大きいことに驚いて、ギョッと目を見開いた。  龍之介は上から下まで五着ずつ服を購入したのだ。  いくらになるか大体で計算して、幸人の手が震える。 「龍之介さん……! これ、すっごく高いんですけど……!」  幸人が慌てて袖を引けば、龍之介はきょとんとした表情をする。 「んなことねぇよ、こんなもんだ」 「で、でも……」  戸惑うように瞳を揺らす幸人を見て、龍之介が笑った。  そして、身を屈めて深い青の宝石が付いたループタイを首にかけてやる。 「やっぱり似合うな」  幸人の瞳と同じ色の宝石を見つけて、気がつけば一緒に購入していた。  こうして幸人の胸元で輝いていると、まるであつらえたようにしっくり来る。 「あの……龍之介さんは、なんでこんなに良くしてくれるんですか?」 「理由がないと不安か?」  幸人がこくりと頷く。  どうして昨日会ったばかりの他人に、ここまで惜しみなく金をかけられるのだろう?  村では献金や貢ぎ物を持ってくる者は、必ず祈祷や厄払いといった見返りを求めてきた。  だが、龍之介は結奈の捜索以上のことを、幸人に一切求めない。  ただただ与えられるという経験が少ない幸人からしてみれば、この状況でどう振る舞うべきか分からなかった。 「そうだな……。俺はお前が気に入った、それじゃダメか?」 「ダメじゃないっすけど……。じゃあ、俺は龍之介さんに何を返せばいいですか?」 「たくさん笑って、怒って、泣けばいいんだ。俺はお前が何を考えて、何で心が動くのか知りたい」  龍之介が幸人の白い頬を撫でる。  最初は仕事上の関係、次に同情へと変わった感情は、新たに興味へとその形を変えた。  幸人が何で喜び、何で涙を流すのか。何を好み、何を険悪するのか。  どんな些細なことでもいい、知りたくて堪らない。  熱の籠った視線を受けて、幸人がふいと横を向く。 「そんなの、お礼にならなくないですか?」  どこかぶっきらぼうな口調で言うが、その頬は薄紅に染まっている。 「礼がしたいんなら、抱き枕になってくれればいい。お前には安眠効果があるみたいだからな」  悪戯に笑って、龍之介が言った。

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