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 シャワーを浴びて、幸人は真新しい寝巻きに袖を通す。  サラサラとしたそれは肌触りが良く、着心地も抜群だった。 (さっきは恥ずかしかった……)  リビングに戻って来た幸人は、ソファに座りながら小さくため息をつく。  まさか、再び龍之介とキスをすることになるとは思ってもいなかったのだ。  それも、あんな風に力を注がれたうえ、龍之介と互いの股間を触り合うことになるなんて……。 (でも、気持ちよかった)  無意識のうちに、幸人が自身の唇をなぞる。  公園で自分からキスをした時。  やむを得ない状況だったとはいえ、不思議と龍之介に口付けることに嫌悪感はなかったのだ。  そしてさっきのキスも、手淫も嫌だとは微塵も感じていない。  龍之介のゴツゴツとした手が敏感な部分を這う感覚を思い出して、幸人がみるみる赤くなる。  そして、記憶を頭の中から追い出そうと、ぶんぶん首を横に振った。 「何してんだ?」 「な、なんでもないっす!」  幸人の次にシャワーを浴びていた龍之介が、リビングに顔を出した。  清潔なシャツを羽織った龍之介は、幸人の様子を見てクスリと笑う。  それから小さな箱を片手にソファに腰掛けると、幸人の前髪をくしゃりとかき上げた。 「顔色、良くなったな」 「龍之介さんがたくさん力をくれたおかげです」  そう答えれば、龍之介は愛おしげに何度か幸人の髪をすいた後、手にした箱を差し出す。 「爺さんからのプレゼントだ」  手渡された長方形の箱をまじまじと見ていた幸人だったが、龍之介に促されて箱を開ける。  中に入っていたものを見て、瑠璃色の瞳が輝いた。 「スマホだぁ!」  生まれて初めてのスマートフォンを手にとって、幸人が嬉しそうに観察する。  裏を見て、表に返して、両脇に付いたボタンに触れた。  すると、画面が光ってアプリの並んだホームが表示される。 「ひとまず必要なアプリはダウンロードしておいたし、保護フィルムとケースも着けてある」 「ありがとうございます!」  通話の仕方やメッセージの送り方など。  使い方の説明をする龍之介の声に、幸人が頷きながら耳を傾ける。  辿々しくスマートフォンを操作する幸人を微笑ましく見守っていると、インターホンが鳴った。 「原田が来たみたいだな」  ポンと一つ幸人の頭を撫でてから、龍之介が玄関へと向かう。  モニターに映し出された原田の姿を見て、龍之介が声をかけた。 「ご苦労さん、荷物持って上がって来てくれ」 「……はい」  一瞬、驚いたような表情をしたが、原田は素直に頷いて荷物を持って画面から消える。  数分もしないうちに、エレベーターの扉が開いた。 「お疲れ様です」  両手にいくつも荷物袋を提げた原田が、龍之介に頭を下げる。 「これで全部か?」 「はい」 「そうか。ならリビングまで頼む」  その言葉に、いつも無表情な原田が目を見開いた。  龍之介が他人を家に上げないことは、部屋住み連中の間でも有名な話だ。  若頭補佐や親しい間柄の女性であっても、徹底して貫いてきたその決まりごとが、いとも簡単に破られたことに驚く。

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