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 切って、書いて、貼る。  たわいない話を(主に龍之介と幸人が)しながら、和気藹々と作業を進めた。  みるみるうちに築かれていく御札の山を整理していると、途中で龍之介のスマートフォンが着信を告げる。 「俺だ。……そうか、ご苦労さん」  電話を取ると、手短に会話を終えて龍之介が通話を切った。 「ちょっとばかし気になってな、知り合いに調べさせたたんだが……。結奈以外の被害者も、共通して二年以内に身内を亡くしているそうだ」 「ってことは、真美さんのフリをして結奈ちゃんをさらったように、他の被害者にも同じことをしてる可能性が高いっすね」  幸人が神妙な面持ちで考えこむ。  結奈は母親を、五十代男性は伴侶を、二十代女性は弟を。  大切な人を失った悲しみや寂しさにつけ込んで人を連れ去っているのなら、かなり悪質だと龍之介は思う。 「なんのために人をさらってるのか、目的が分からないけど……龍一郎さんと龍樹くんも、気をつけた方がいいと思います」 「そうだな。報告も兼ねてあとで連絡しておく」  龍一郎も龍樹も、結奈と同じ"家族を弔った者"だ。  犯人がそういう人間ばかりを狙っているのなら、彼らが目をつけられる可能性もある。  気をつけろと言っておくに越したことはないだろうが……いかんせん、相手は霊的な存在だ。  霊感もないただの人間に、身を守ることが出来るのかは分からない。 「なぁ、ユキ。霊から身を守るお守りみたいなもんはねぇのか?」 「ないことはないっすけど、相手が悪いというか……どこまで効果があるか分かりませんよ?」 「それでいい。気休めでも持たせておけば、多少安心出来るだろ」  何も出来ずに連れ去られるよりも、打てる手は打っておくに越したことはない。  まだ幼い龍樹は簡単に騙されるだろうし、幽霊を信じていない龍一郎だって、目の前に真美が現れれば少なからず動揺するだろう。  その上、組長の血縁者から更なる行方不明者が出たとなれば、黒縄組内部の混乱も大きくなる。  ただでさえ筧の連中が妙な動きをしているのだ、これ以上の問題はごめん被りたい。 「原田。明日の朝までに、何人か手の空いてる奴を集めといてくれ。ここ数年で身内が亡くなってる奴は除外しろよ」 「分かりました」  原田が頷くのを見て、龍之介が立ち上がる。 「そろそろ夕飯の準備に取り掛かるか」 「今日は何を作るんですか?」 「一応、ハンバーグの材料があるんだが……」  ハンバーグという言葉を聞いて、幸人の瞳が期待で輝く。 「それってアレですよね? ひき肉を丸めて焼いて、ソースとか目玉焼きとかチーズとか乗せて食べるやつ!」 「その通りだ。けど、お前体調は大丈夫なのか? 食欲がないならお粥でも……」 「あります! 全然食べられます! ハンバーグがいいです!」  龍之介の言葉を遮るように言うと、幸人が元気だとアピールするように両腕を動かす。  その必死さが可愛くて、龍之介がくつくつと笑った。 「原田さんだって食べたいですよね?」 「いえ、俺は……」 「なんだ、俺の作った飯が食えねぇってのか?」 「そういうわけではなく……」  わざとらしく凄んで見せれば、原田が焦りだす。  原田としては決して龍之介の手料理が食べたくないわけではなく、二人の時間を邪魔しないようにと気を遣っただけなのである。  あわあわと言葉を探す原田を見て、龍之介はイタズラっぽく笑った。 「冗談だ。変に気ぃ回してねぇで、暇なら食ってけ」 「そうですよ! 俺ももっと原田さんとお話ししたいし」 「……はい」  二人の言葉に、原田は素直に頷いたのだった。

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