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食い扶持が減り、一人が食べられる量は少し増えました。
飢えは凌げませんが、これならなんとか生きていくことが出来そうです。
多くの犠牲を払って、村は飢餓を乗り越えました。
分厚い雪が解け、山菜が芽を吹きだした頃。
随分と痩せこけた村人たちは、ようやく平穏な生活への一歩を踏み出したのでした。
動物を狩り、つくしやよもぎを採り。
生きられなかった人々のぶんも懸命に生きる。
しかし、飢餓の残した傷も癒え始めた時に、事件が起こりました。
東のお山の麓で遊んでいた子どもが一人、いつまで経っても帰って来ないのです。
村人たちは総出でお山を探しました。
松明を持つもの、太鼓を打ち鳴らすもの、子どもを呼ぶもの。
生い茂る木々の深くに分け入り、何日もかけて懸命に探しましたが、結局子どもは見つかりませんでした。
その数日後、再び子どもが一人いなくなります。
日にちをあけてまた一人、もう一人。
村人たちは、いよいよ困り果てました。
山で迷った、動物に襲われた。
そういう次元の話ではない、何かが子どもたちをさらっているのです。
村は出来る限りで対策をしました。
子どもたちを決して一人にはせず、外から来る見知らぬ人間を警戒し。
夕方が来る前に一人残らず子どもを室内にいれ、一歩も外に出ることを許しません。
それでも、いつの間にか子どもの数が減っているのです。
誰もが諦めかけていたその日、村に旅の行者がやって来ました。
彼はすぐに村に漂う不吉な気配に気づき、村長へと声をかけます。
「この村で、何か困ったことは起きていないか?」
村長はすぐに子どもたちのことを話しました。
すると、行者はこう言ったのです。
「何か悪いものが山にいる。そいつが村に降りて来て、子どもたちをさらっているのだ」
村長はピンと来ました。
もしかしたら山に捨てられた者たちが、化けて出ているのかもしれない。
飢餓の時に老人や子どもを口減らしで山へと連れて行き、供養もしていないことを伝えると、行者は険しい顔で腕を組みます。
「それが原因かもしれない。彼らの魂が怨霊と化しているのなら、鎮めなければもっと被害が出ることになるぞ」
なんとかしてほしい、と村長は行者に泣きつきました。
このままでは村から子どもがいなくなってしまう。
そうなれば、この村に未来はありません。
行者は頼みを受け入れ、山へと子どもたちを探しに行きます。
子どもたちに罪はありませんし、もしも山で死んだ人々の魂が怨霊と化しているのなら、供養をするつもりでした。
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