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第17話※ がんばれ、我慢だ〈side大城〉

 許しをもらえるやいなや、俺は篠崎のほうへ身を乗り出し、再び唇を奪った。  さっきよりも幾分強引なキスになってしまったせいか、篠崎が一瞬身を引きかける。だが俺は腕を伸ばして篠崎の後頭部を手のひらに閉じ込め、何度も、何度も篠崎の口内を思うさま味わい尽くす。 「ん、っぅ……は……っ」  時折たまりかねたように吐息を漏らす篠崎の声が可愛くて、居ても立っても居られないような気分になった。だけど、ここで調子に乗ってはいけない。いくら「手を出していい」と本人が言ったとはいえ、篠崎を怯えさせてしまうわけにはいかないのだ。 「はぁ……っ、ぁ……ん」  ちゅっと下唇を軽く吸ってから唇を離し、篠崎の頬を撫でる。火照った唇は唾液で艶めき、初めてのキスに翻弄されているかのように余裕のない瞳はどこか幼気でいじらしい。身体からすっかり力が抜けてしまっている篠崎を、俺はそのまま、ソファの座面に押し倒した。 「っ……おおきさん……」 「いやじゃないのか? 男にこんなキスされて、怖くないの?」  俺に覆い被さられてやや不安げな篠崎を宥めるように頬を撫で、そう尋ねてみた。ノンケの男からすれば、男にキスされたりのしかかられたりするのは、不愉快極まりないことだろう。  すると篠崎はかぶりを振り、「それは……僕も不思議なんですが」と前置いた。 「大城さんにされるのは、怖くないです。これまで、同性相手に特別な感情を持ったことはなかったですけど……」 「そうなのか?」 「はい。……大阪で、大城さん、僕のことをすごく大切そうに扱ってくれて……何だか、すごく嬉しかったし」 「……うん」 「だから今も、怖くはないです。……その、どう振る舞えばいいのかわからないってのはあるんですけど」 「ははっ」  思いのほか真面目な返答で、俺は思わず笑ってしまった。  篠崎の前髪をかき上げて額にキスを落とし、頬にも唇を寄せ、耳元で囁いた。 「なにも考えなくていいよ」 「っ……あ、あの、耳は」 「ん? 耳がなに?」 「ぁっ……あの、あんまり、耳元で喋らないで……っ」 「へぇ、耳弱いんだ」 「んっん」  あえて声を低くして耳孔に唇を寄せると、その度にびく、びくっと反応する。初々しい反応が可愛いし、反応のいいところを見つけられた喜びもあってイタズラ心が湧き上がり、そのまま篠崎の耳にキスをした。 「ァっ……うわ……っ」  する……と片手を下ろして篠崎のシャツの中に手を忍ばせ、脇腹から上へ掌を這わせてゆく。篠崎は身を捩りながら「や、っ、あのっ……、んんっ」と物言いたげにしているが、吐息が乱れて言葉にするのが難しそうだった。  ——すげえ敏感……ああ、もうエロすぎるしかわいすぎんだけど……。うう〜〜〜ヤりたい、抱きたい、セックスしたいいいい…………っ!!  煩悩の化身となってしまいそうな自分を、なけなしの理性で必死にいなす。俺はスマートに篠崎を気持ちよくしたいのだ。俺となら最後までしてもいいと、篠崎に思ってもらえるように頑張らねばならない……!!  だが、手の方は止まらない。シャツの中で、俺の指先は、とうとう小さな尖りをとらえてしまった。 「ぁっ……! あの、おおきさっ……ん」 「ん……? どうした?」 「そんなとこ、あのっ……ンっ……待っ……」  かり、と指先で柔らかく掻いてみると、篠崎はことさら大きく「あ!」と声を上げた。そして、その声を恥じるように口を手で覆いながら、そろそろと俺を見上げる。 「そ、そんなとこ触って……た、たのしいんですか……?」 「楽しいかって? まぁ……楽しいよ。すごく楽しい、俺は」 「へ、へぇ……平坦でなにもないのに……」  もっともな疑問に、俺はまた笑ってしまう。篠崎の反応が色々新鮮すぎて、なんだか楽しくなってきてしまった。 「篠崎はココ、触られてどんな感じなんだ?」 「っ……な、なんかくすぐったい、けど……それだけじゃないような感じが」 「へぇ、そうなんだ。じゃあ、もっと試してみる?」 「はっ?」  困惑気味な篠崎の顔を見つめながら、片手でシャツをたくし上げてゆく。  細い腰、想像よりも引き締まった腹が徐々にあらわになってゆき……とうとう、薄桃色の無垢な乳首が、俺の前に晒される。俺は思わず嘆息した。  ——やば……エッロ……。まっさらって感じがめっちゃくちゃエロい……。  この前人未到の純真無垢な乳首が、俺のせいでこれから性感帯になってしまうのかと思うと罪悪感が込み上げてくるが、同時にめちゃくちゃ興奮する。むしゃぶりつきたい気持ちはありまくるけれど、ここは紳士的に、余裕のある男ぶって、篠崎をもっと気持ちよくしてやりたい。  軽くそれにキスをすると、篠崎は「んんっ……」と戸惑いの滲む吐息を漏らす。そのまま濡れた舌の腹でゆっくりと舐め上げ、尖らせた舌先で捏ねるように舐めくすぐる。 「ぁっ……おおきさんっ……ん、っ」 「……ん?」 「や……なんか、っ……あの、まってくださ、ぁっ……」  待ってというわりには、篠崎は俺から逃げようとはしない。  ふにっとしていた小さな尖りは、俺が舐め転がすうちにみるみる芯を持ちはじめているし、篠崎の声も熱っぽく、艶めきはじめている。 「ん、ぁっ……っぅ……」 「……どんな感じ?」 「はぁっ……わかんな……っ、ぁん、っ……ん」 「篠崎のここ、どんどん固くなってきてる。ちょっとは感じてもらえてるのかな?」 「ぁっ……ん、んんっ」  舐るのをやめ、指先で弄びながら軽くキスをする。胸を上下させて息を弾ませながら、篠崎は無言でこくこくと頷いた。  ますますいやらしさを帯びてゆく表情に突き上げられるものを感じた俺は、かぷりと唇ごと食べてしまうかのように、濃密なキスで篠崎を貪った。 「ンンッ……ん、ぁっ……ふっぅ……ん」  大胆に舌を絡ませ、フェラをするように篠崎の舌を愛撫しながら、初めての刺激に晒される乳首も可愛がる。淫らにリップ音を響かせながら、指で執拗なまでにそこをいじるうち、篠崎の腰がもどかしげに揺れ始めていることに俺は気づいた。 「篠崎……腰、動いてる」 「えっ……? あっ、す、すみません、ぼくっ……」 「謝んないでよ。すげぇ可愛い。……気持ちいい?」 「ぅっ……んっ……ん」  涙目をぎゅっと瞑ってこくりと頷く篠崎の可愛さに、股間がずぐんと反応する。  ——ああ〜〜〜〜、くそ……腰の動きエロい……エロすぎる……!! もう全部脱がしてめちゃくちゃに抱きたい……はぁ、はぁ……っ。  と、本音の部分では相当ヤバいことになっているが、俺は荒ぶる本能を必死で押しとどめる。  でも、はち切れそうな股間はもうそろそろ限界だし、興奮のあまり俺の息も上がっている。クールぶってるのにハァハァ言いながら篠崎を攻めてる自分が相当気持ち悪いのだが……!?  だが、やはり手のほうは止まらない。  胸をいじっていた手が、そのまま篠崎の股ぐらの方へと降りてゆく。 「……こっちも、触っていい?」 「えっ……? あ! っ……まってくださっ……ぅあっ」 「すごい、こんなに硬くなってる。ああ……フェラしたいな」 「だ!! だめですそんなっ、汚いのでっ……!!」  思わず漏れた本音だが、全力で拒否されてしまった。  というか、篠崎もフェラチオという言葉くらいは知っていたのかと若干驚く。だが、篠崎も25の男だ。それくらい知っていて当たり前といえば当たり前なのだが、どういう経緯でそれを知ったのかが無性に気になる。  知りたい。いつ、どういうタイミングで性に目覚めたのか、どんなオカズを好むのか……そして、そういう思考に傾いている自分がシンプルに気持ち悪い。  そしてやはり、手のほうは止まらない。  篠崎をキスで黙らせながら、俺は細身のジーパンの前をくつろげ、尻の下までずるりとずらす。  身体にフィットした黒のボクサーブリーフの中で、形がくっきりわかるほどに勃起した篠崎のペニスを、俺は手の中に包み込んだ。下着越しだが、そこはすでにとろりとたっぷり濡れている。先走りが溢れるほどに俺の愛撫で感じてくれていたのかと思うと、嬉しくて、いやらしくて、頭が爆発しそうだった。 「ぁっ……! ァっ……おおきさん……っ!」 「すごいな……こんなに硬くなって、こんなに濡れて」 「んっ……や、はずかしいです……っ、見ないでください」 「全然恥ずかしくない。……俺、すげぇ嬉しい。篠崎が、俺で気持ちよくなってくれてる証拠だろ」 「ぁ……」 「嬉しい。……すげぇ可愛い。好きだよ」  唇を奪いながらペニスを揉みしだくたび、篠崎の腰が淫らに揺れる。時折顔を離して表情を窺うと、篠崎の目からも徐々に理性が消え失せて、快楽に身を委ね始めている様子が見て取れた。 「ぁっ……ァっん、んっ……ん」 「……もうイキたい?」 「ん、うんっ……ん、でも、ぼくばっかり……きもちよくなるのは……っ」 「俺はいいから。……篠崎がイくとこ見たいな」 「っ……や、やですよっ……見ないでくださいっ……!」 「だめだ。よく見せて」  少し声を低くしてそう言うと、篠崎の涙目がうっとりしたように俺を見上げた。  軽いキスをしながら下着をずらすと、濡れたペニスがふるりとしなる。手の中に包み込んで軽く扱くと、くちゅ……と淫らな音とともに、篠崎のそれがさらに硬くなった。 「っ、んっ、はぁ、……んっ……!」 「……はぁ……エロ。……気持ちいい?」 「んっ……はい、……ぁっ、さきっぽ、やっ……」 「ここ、好きなのか? また溢れてきた」 「や……ァっ……はぁっ、あっ」  鈴口を親指でくるりといじると、篠崎の腰がびくん! と跳ねる。たまらなくエロい絵面だった。  俺の腕の中でしなやかな身体をよじらせて、初めての快楽に腰を揺らして、涙目になりながら必死で声を殺している。篠崎の痴態をつぶさに見つめながら愛撫を繰り返すうち、びく! びくっ! とさっきよりも反応が大きくなり……。 「っ……ぁ、イくっ……いくっ……んんんっ……!」  包み込んだ手のひらの中に、びゅくびゅくと熱いものが迸った。  目を固く閉じ、今にも泣き出しそうに切なげな顔をして、全身を震わせながら達する篠崎の姿は暴力的にエロい。普段が清らか極まりないため、あまりのギャップに眩暈がする。  射精の余韻に震える篠崎の姿を目の当たりにしていた俺のペニスも、今にも破裂しそうだ。痛いしつらいしイキたすぎて泣きたいくらいだ。 「……えっ、おい、篠崎」 「ごめんなさい、僕ばっかり……」  つらさを堪えるべく目を閉じて浅い呼吸をしていると、篠崎がのろのろと身体を起こした。軽く胸を押されてソファにふんぞり返るように座らされ高と思うと、……あろうことか、篠崎が俺の脚の間に跪いた。  ——え!? なんだ? なにをするつもりだ!? 今触られたら俺、一瞬でイくんだが!? 「し……篠崎、無理しなくていいって」 「うまくできるかわからないですけど、でも、こんなに硬くて……大城さんつらそうですし」 「いや、ほんとにいいから……っ、ほんとに」 「でも……」 「んん、んっ……!」  ズボン越しに軽く触られただけで、甘く痺れるような刺激が脳天を貫く。  まさかそれだけで射精してしまったのかとゾッとしたけれど、なんとか無事だ。なんとか堪えているようだ。……が、あまりに早くイってしまうところを見られたくないし、この体勢では顔射不可避。ちょっと見てみたい気はするけれど、ダメだ。それだけは絶対に避けたい……!! 「……お、俺はいいから。シャワー……使うか? それじゃ家、帰れないだろうし」 「あっ……。た、確かに……」  篠崎の下半身はトロトロにいやらしく濡れそぼっているし、ずいぶん汗もかいている。自らの状態を見て我に返ったらしい篠崎は、苦笑しつつ「……借りてもいいですか?」と言った。 「ああ、もちろん。あ、俺、シャワー中に何かしにいったりしないからな、安心して浴びてくれ」 「え? あ……はい。ありがとうございます」  言わなくてもいいことまで口走りながら、バスルームに篠崎を連れて行く。そしてドアを閉め、俺は大きなため息をついた。篠崎が出てくる前に、早々にトイレで抜かなくてはいけない。  ——それにしても、篠崎、くっそエロかったな……。めちゃくちゃ感度良かったし、喜んでくれてたらいいんだけど。  さっきまでの夢のような時間を思い出すだけで、ずっくんと股間が痛む。  よろよろとトイレに向かうのはつらかったけれど、俺の心はこれまでになく満たされていた。

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