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第4話
吉継は厚木に促され、口を濯いで着替えてベッドに押し込まれた。
「寝ろ」
「あ…でも…汚してしまって、片付けないと」
「いい、今日は寝ろ」
「…すみません」
気になることはあるが、厚木は取り付く島もない。
こんなところで油を売っている場合じゃないのに。
あの人達は、本当にどこにいても追いかけてくる。
どうして厚木は全部を知って、そんなに平然としているのだろう。
もぞもぞ動いて寝られない吉継に業を煮やしたのか、舌打ちが聞こえてきてびっくりする。
なにか気に触ることをしてしまったのか、何をされるのかベッドの中で恐々としていると、大きなため息が聞こえた。
「…明日の朝、ニュースを見てみろ」
「え」
「だいたいのことはそれでわかる。わからないことだけ質問しろ」
厚木はそれだけ言って、出ていった。
一人になって、やっと一息つけた。
厚木…、あのDomは吉継には圧が強過ぎて、同じ部屋にいるだけで緊張してしまう。
上から物を言うところは今までのDomと同じだが、暴力も暴言も言わない。
…吐いても怒られなかった。
吉継が慌てて舐め取ろうとした首根っこを厚木に押さえられ、浴室へ引っ張られた。
「脱げ」と言われて、汚れた服を脱ぎながら、何が始まるのかと震える吉継を無視して、「洗え」とシャワーヘッドを押し付けてきた。
厚木はさっさと裸になり、吉継の脱いだ服も丸めてゴミ箱に放り込んでいた。
吉継の視線に気づき、「着るつもりだったのか」とゴミ箱を指差す。厚木は首を振る吉継を見て、鼻を鳴らす。
「着替えが無いので…」
「用意させる」
吐瀉物を洗い流し、ノロノロ洗っている吉継に「早くしろ」と言い残して厚木が出ていく。
浴室のガラス越しに、厚木が服を着ているのがぼんやりと映っていたがやがて見えなくなった。
吉継が浴室から出ると、着替えが置いてあった。
大柄な吉継にサイズがぴったりで、本当に厚木が誰かに用意させたことが伺えた。
翌日、言われた通りテレビを点けたら、吉継の”ご主人様”が、傷害罪で現行犯逮捕されていた。
その他、複数人の名前が挙がっており、全員吉継の知っている男達で、あ然としたままその場に座り込んでしまった。
ニュースを見続けるにつれ、やっとこの事件の被害者が自分だと気づいたが、理解が追いつかず、厚木に早く来て欲しいと願った。
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