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第6話
あれから、前からぎゅーさせろだの潤もぎゅーしてだの大型犬は少しわがままになってきた。それは別に嫌ではない。目隠しを取ったり外したりが面倒だけど…だから、たまに意地悪したくなる。
「シンお前…最近調子に乗ってるよな?ウジウジしてた頃のシンはどこに行ったんだよ。あの頃の方が可愛かったなー」
「……潤がもっとアピールしてこいって言ったから…」
「お、オレのせいか?そうかそうか」
「違う!潤のせいとかじゃないけど、潤には思ってることや、やりたいこと言ってもいいのかなって…好きな気持ちそのままぶつけていいって思ったからっ」
え?泣いてる?やばいじゃん!意地悪し過ぎたか…
「あーごめんごめん。嫌とか思ってないよ。ちょっと意地悪しただけ。ごめんごめん。シンおいでぎゅーしよ?」
「……」
黙って来てぎゅーする。本気にして泣くとか、、かわいい奴。てか、こいつに何かあってもオレからは側に行けないんだな、、この目隠しのせいで…いつ外させてくれるんだろ…
「なぁ、この目隠しはまだ必要なのか?」
「…このままがいい」
「ふーん、じゃあ、オレたちの関係もずーっとこのままだな。でも、もしオレに恋人とか出来たらもう来ないんだろ?」
「え…恋人?出来たの?」
「いや、でも友達から紹介したい人がいるって言われてるから会ってみようかと思ってるよ」
「……そうなんだ…いつ会うの?」
「もうすぐ大学始まるだろ?始まったら大学でってなってるけど」
「……」
「あのなシン、オレだって好きになった人には触れたいしそれ以上のこともしたいと思うんだよ。それにその人がどんな風に笑うのか見たいし」
「……分かった…彼女が出来たら終わりにする…」
「あっそ、、じゃあ紹介は受けていいんだな?」
「…オレに止める権利ないでしょ?」
何だよ…あっさり引くのかよ…
少しショックを受けている自分に驚いた。
これじゃあ、オレの方がシンのこと好きみたいじゃん。
確かに、大型犬みたいでかわいいし料理上手だし、好きが重たいのもオレには心地良いし、シンがいないことが想像できなくなっている。
…そうか…オレ、シンのこと好きになってたんだ…
「もし、その子と付き合うようになったら言うな?」
「…うん…」
「じゃー、この話は終わり!」
この大学二年生の夏休みは一生忘れないだろうと思う。
新学期が始まったら恋人ができていなくてもできたと言ってこの関係を終わらせようと思っている。自分の気持ちに気づいた今、始まることのないこの関係を続けるつもりはない。
数日残る夏休みはバイト以外は出来るだけ家でシンと一緒に過ごした。
「もうすぐ大学始まるな」
「…うん…」
「シンはあんまり大学楽しくない?」
「オレはいつも一人だから…そんなには…」
「そっかー。オレは結構楽しんでるかなーシンとも一緒に飲みに行ったり出来たらいいな」
「…無理だよ」
「そうだな…」
「潤…キスしたい…」
「…それは無理」
「潤…」
「…顔を見せたくれたらしてもいいけど」
「……」
「……」
「…ごめん。やっぱり無理…」
だろうなと思っていた…
あーやっぱオレ、、好きになってんじゃん…
大学が始まってもスケジュールの合間にシンは来て。後ろにくる。ぎゅーっとされながら言う。
「明日、紹介してもらう。帰り遅いから来るなよ」
「…分かった」
「……」
「ねぇ、潤のタイプってどんな人?」
「え?タイプ?急だな。…そうだな、ちゃんと気持ちを伝えてくれる人かな。前の彼女に[あんたの気持ちは重いんだ]ってフラれたから。良かれと思ってしてたことをそう言われるとどう恋愛していいのか分からなくなるだろ?それからずっと恋愛から遠のいてたけど、今度付き合う人とは同じ気持ちを返しながら慎重に付き合いたいって思ってるよ。だから気持ちを伝えてくれないとオレはどうしていいか分からなくなるんだよな…あと、髪の毛は短い方がいい。腕枕するとさ、髪踏んじゃったりしてよく怒られてたから」
「今回は何で恋愛しようって思ったの?」
「もしかして、恋愛しようって思わなかったらこのまま一緒にいられたのにって思ってる?」
「…そうではない、、けど」
「ははは。思ってるなー、んー最近気になる人がいるんだけど、その人とはこの先も実ることはないだろうなって思ったからかな…」
「どうして?」
「んーこっちが知りたい。でも、恋愛したいなって思った。もういいよ、オレの話は。シン来て」
言いながら目隠しをする。
「珍しいね…っっ」
前からぎゅーっとするシンが泣いていた…
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