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第16話

来週から夏休み。この週末はケンジが変わってくれて連休だ。連休が終わればバイト漬けだ。シンに何度か無視されながらも連絡をして明日会うことになっている。冷静に話ができればいいけど… 「ん?…シン…またやったな…」 「……」 夜中に合鍵で入ってきたシンに気づかず爆睡してた…初めてシンに出会った時のようにベットに手足が拘束されて目隠しもされてた。口だけは何もされてなかったけど…オレのバカヤロー… 「シン」 「……」 「シン?いるんだろ?」 「…もう離さない…」 「…お前こえーよ」 「オレ本気だから。もう誰にも触らせない」 「シン…ちゃんと話そ?」 「嫌だ」 「シン本当にこのままでいいのか?」 「いい。潤の気持ちは関係ない」 「……」 「……」 「お前酷いこと言うんだな…もういいよ。好きにしたらいい。その代わり…こんな事するお前には絶対にオレの気持ちはやらねー」 「……っ」 泣いてんだろーな…。こんな事してるシンが一番辛くなってるのは分かってる。さぁーどうするかな…好きにしたらいいって言ったけど明後日の夕方にはバイトが始まる。次の日からは朝から一日中だ。今日明日でどうにかしなきゃ…とりあえず、シンの出方を待つか… !!やばっ!寝てた!、、まぁいっか。 今何時だろ?まだ午前中かな? 少しお腹空いたし、喉も乾いた。 「なぁ、シン。オレ喉乾いたんだけど」 「……」 「!!!!ゴクッ、、ゴホゴホッ、、いきなり何すんだよ!」 急に口移しで水を飲ませてきた。びっくりして気管に入ってむせる。 「喉乾いたって言ったから」 「にしても!やり方があるだろ!せめて声くらいかけろよ!こっちは見えてねーんだから!」 「…ごめん」 「てか、目隠し外せよ」 「…ダメ」 「何でだよ!もうお前のこと知ってるから目隠しの意味ないだろ!」 「それでもダメだって」 「だから何でだよ!」 「目合わせると決めたことが出来なくなる」 「何だよ、決めたことって」 「潤を誰にも触らせない。オレだけのものにする。大体最初から潤を自由にするべきじゃなかったんだ。自由にせずずっとこうしてたらあんな思いしなかった」 「お前…ここ数日連絡しても無視してたくせに、そんな事考えていたのかよ」 「そうだよ。どうしたら潤がオレだけのものになるか考えてた。もう前みたいな失敗はしない」 「何だよそれ…」 「そう言うことだから」 「…じゃあ飲み物とかいらない。今のお前と間違っても口つけたくねーし、口移しとかありえない」 「……」 「トイレはどうしたらいい?ここでしていいのか?」 「待って」 待ってと言って足の拘束と目隠しを外し、手の拘束も一度は外されたが左右の親指を拘束しようとするから慌てて大がしたいと言うとそのままにしてくれた。いつも枕の下に携帯を置いていたのはシンも知っていることだけどこの今の現状に忘れてるんだろう。シンにバレないように立つ瞬間に携帯をポケットに入れた。そして唯一手と足と目が自由になる携帯をトイレに隠してきた。 お互いに何も話さず沈黙だった。 シンが料理をし始めたのが分かった。もう夕方かな…さすがにお腹空いたな…いい匂いがしてきた… でも、今のこいつに食べさせてもらうのは絶対に嫌だからこのままの態勢なら食べない。そう固く決めた。 「ご飯作ったから、食べるでしょ?」 「いらない」 「お腹空いてないの?」 「空いてるに決まってんだろ。この状態が続くのならいらない」 「…分かった。少しの間くらい食べなくても死なないし、もし死んだらオレもすぐに追いかけるから」 「は?何言ってんの?」 「だって食べないんでしょ?あの時と同じ失敗はしたくないから拘束も目隠しも外さないよ」 「あ、そう」 本当に食べさせないでこいつ… 「お前オレのこと好きじゃないよな?」 「好きだから誰にも触らせないためにこんな事やってるんじゃん」 「じゃあ、お前の好きとオレの好きは違うな」 「どう言う意味?」 「オレはどんな嫌なことがあってもこんなことはしない」 「じゃあ、自分だけが苦しい思いすればいいってこと?」 「確かに辛いこともあるかもしれないけど、どんなに嫌なことがあっても自分の思いばっかりで相手の気持ち無視するのは違うだろ?」 「…どうせオレは気狂いのストーカーだもん…」 「何だよそれ、、開き直ってんじゃねーよ。大体、ケンジはお前にも紹介して仲良いって知ってるじゃん。なのにケンジとのことでこんなことされたらたまったもんじゃねーよ」 「だからって抱き合うことないじゃん」 「オレらのコミニュケーションはスキンシップが多いんだよ。だからってそれ以上は絶対にないから。だってあいつ女の子大好きだからな」 「…うるさいよ。そうやって言いくるめようとして…次は絶対失敗しないんだから」 「分かったよ、、もういい。オレの気持ちなんてお前にとっては大したもんじゃねーんだな。何かオレ一人馬鹿みてーお前の好きにしろよ」 冷静に説得しようとしても熱くなってしまう…やばいな、、このままだとバイトに行けなくなってしまう。平然と言って見せたものの内心はかなり焦っている。ケンジに連絡しよう。携帯がないと気づかれるのも時間の問題だ。おそらくチャンスは次の一度だろう。 トイレには行かせてくれるから、『明日の夜9時までにオレから電話する。電話がない場合、家に来て出てくるまでチャイム鳴らしてくれ。』とケンジにメールをした。長文を打つ時間はないけど、この内容だったらケンジに伝わるだろう。そもそも一瞬の隙を狙って拘束されないようにどうにか出来れば… 「まだ?」 「もう出る」 ケンジにメールしたから明日の夜にはどうにかなるとして、ただ、今のシンは何をするか分からない。今日は大人しく従って明日目が覚めた時に話してみよう。 「シン、オレ横向きで寝たい。てか、体痺れるから寝返りしたい」 「じゃあ…目隠しと足だけ繋いどく」 「うん。シンはどこで寝るの?」 「…下で寝るよ」 「…そっか」 「……」 「…おやすみ」 「…おやすみ」 「シン寝た?」 「寝てない」 「床痛くないか?」 「…大丈夫」 「痛くなったらこっち来いよ?」 「…大丈夫」 おやすみを言ってからしばらくして、後ろでシンが泣いているのが分かった。抱きしめてやりたい…こんなに近くにいるのに… 結紮バンドで拘束されてる部分がある足は痛くて取れなかったが長く身動きができるようにしてくれた。これ意味あるか?と思ったけど、ここで外して自由になっても意味がない。だからあえて外さない。明日の夜にはケンジが来てくれるから、それまでに解決したい… まだ泣いてるのか気になって目隠しを外してそっとシンを見ると寝ていたが涙で濡れていた。 目が覚めた。時間は分からないがおそらく朝だろう… 朝食の匂いがしてきた。上体を起こす。 「おはよう潤」 「おぅ、おはよう」 「朝ごはんどうする?」 「…いらない」 「……」 「なぁ、シン。話そ?」 「…嫌だ」 「…シン来て」 求めるように手を伸ばす。 「やめて…そうやって丸め込まないでっ」 「シンはぎゅーしたくない?オレはめちゃくちゃしたいんだけど」 「…嫌だ」 「シンお願い、来て。ぎゅーして話そ?」 「ダメだって!オレは話さない」 「何でだよ。お前なんでこんな事すんだよ、女の子紹介してもらうって嘘ついた時はこんな事しなかったじゃん。今とあの時と何の違いがあんだよ」 「あるでしょ⁈セックスした。だから潤はオレの…」 「ちょっと待て待て…待て…お願いだから」 意味がわからなかった。シンを理解しようとしても、もう無理なのかも…嫌だ…こんなの…どんな思いでシンを受け入れたのか…それでもオレの気持ちは伝わっていないのか…シンだからいいと思ってた…この気持ちが… 自分は強がっていたのかもしれない…涙が出てくるのをシンに見られたくなくて顔を背ける。目隠しをしてても溢れ出てくる涙。 黙って立ちすくむシンがゆっくり近づいてきてオレの側でしゃがんだ。 「…潤、、泣いてるの?」 「なんで、、なんでオレの気持ちが分かんねーんだよ」 「……」 「そうだよ、、オレたちセックスしたじゃん。オレ友達とはセックスしねーよ。ハグはしてもキスやセックスは好きな人としかしたくないって前に言ったよな?なのにオレの気持ちは伝わってねーのかよ。オレが信じられないのかよ…」 「…潤…」 「もういいよ…」 起きてすぐの出来事だったけど、ベットに横になった。ケンジがくるまで待とう。何を話しても無意味だ。シンとのことは諦めよう。半分不貞寝だったけど、寝て待った。

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