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第13話
「この俺に、え、餌付けをしようだなどと思うなよ! それに……そのなりでは、野生動物を殺して肉は食うんだろうがっ。それとも隠れて人間を食ってこれほど肥えたのか?」
「なっ……バルド、お肉なんて食べないよ! 生きてきて一度も食べたことないし、気分にもならない! そ、それに、人だなんてもっと……う、うっぷ」
考えただけで吐き気が込み上げてきて、思わず口元を手で覆う。
野生動物の肉を食べる習慣は知ってはいるからまだ価値観の違いだと納得できるにしても、人間なんて食べられる者の気が知れない。特に父のせいで強烈なトラウマになっている。
「……ベジタリアンのオーク……だと……。と、とてもじゃないが聞いたことがない……。お前っ、どこまで異端のオークなんだ」
「わ、わからないよ……これが普通って、思って生きてた……から」
ファングはこめかみを押さえ、深い深いため息を吐いている。
それはバルドにというより、自虐のように聞こえた。
「おいオーク……ではなくて……お前……でもなくて……ええと…………ば、バルドゥインとやら」
「バルドでいいよ」
「……バルド、俺は自分が思うよりも怪物についてだいぶ差別意識があったようだ。特にオークは今の時代、希少種なのでな……どうしても狩らねばならんと、間違った正義感で動いてしまった。その節は……すまない」
騎士に謝られるとは全く予想しておらず、あわあわとしてしまう。
「ふ、ファング……様。そんな、騎士様なら当然のことをしたまで、だと思うから……謝らないで……」
「いいや、筋はきっちり通させてもらう。全ては俺が誤解したせいだ。それから俺のことも、ファングでいい」
ぽかんとする他なかったが、かのファングも話せばわかる部分があるのだな……なんて。
騎士様というよりファング個人に対してとても無礼な人だという印象を抱いてしまっていたからこそ、そのギャップに面食らった。
「しかし……オーク族はとっくのとうに絶滅したと言われて育ったが、お前のように逃げおおせた奴もいたのだな。おいバルド、お前異種族と交配して子孫を増やしてなどいないだろうな。また厄介な怪物が増えたらこっちはたまったものじゃない」
「そ、そんなこと、しない。家族……もう、いない。最初にお母さんが騎士に殺されて、怒ったお父さんも、みんな狩られた。小さいバルド、何もできなかった。大きくなっても、ここで独りぼっち」
「……なるほどな。そんなはぐれ者はよくいる」
そう……それが怪物だろうが人間だろうが、同胞を死に至らしめた相手への復讐心に駆られるのだろうけど。
バルドの場合はそんなことすらできないし計れないのろまだったこと、村民と関わりを持ったことがきっかけで、今の今まで匿われていたからこそ、何の因果か生きて来られた。
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