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第15話

「ジークフリート家自体騎士の家系ではあるが、父上がオーク族を一掃した手柄で、俺たち家族は国王や教皇にも匹敵する高位を手にした。父が英雄と呼ばれるようになったのも、俺が後を継いだのもその件からだ。だがそれは……バルドの同胞を……親を殺して得たものだったんだな」 「……ファング、悪くない。普通はっ……ば、バルドだって、他の怪物、怖い。人間、怒るの、当たり前。騎士様はみんなそれが国のお役目だし……自業自得、だよ」 「人間が憎くないのか? 俺だって……お前を見た目だけで判断していきなり殺そうとしたのに」 「バルドのお父さん……みんなも、バルドが嫌なことばっかりさせようした。バルドは戦うの、好きじゃない。ただ穏やかに暮らしてたい。でもオークだから……命を狙われることも、慣れてる」  話を神妙に聞いていたファングが、首飾りの牙を握り締めた。 「このドラゴンも……他の怪物も……命は命だった……。そんなこと一度だって考えもしないで、ずっと戦いに明け暮れていた。フッ、人間以外は敵だと何の躊躇いもなく殺せるなんて、騎士の方が化け物じみてるな」 「でも……そのドラゴンは、例外。森や村を焼いて、たくさん人が死んで……。復興するまで、動物も生きていられないほどだった。みんな暮らすところがなくなって、困って、怯えて、それをファングは止めた。ファングは……やっぱり、すごいよ」  人としても、騎士としても。  心躍らせたバルドに、ファングは何を考えているのか、しばし黙り込む。  そうして目を細め、何か己には持っていない思考のバルドに対し思うところがあったようだ。  今度はまた、自分に対して鼻をフンッと鳴らして嘲笑した。 「……お前、強いんだな」 「えっ。全然そんなことないよ」 「そうではなくて……心意気の話だ。家族もおらずこんなところに独りで棲んで。さぞ寂しかったろう」  寂しかった……ああ、そうだ。  ローゲの元にいた時も、日々を生きるのに精一杯で。やっとのことで洞窟を見つけた時も、いつ何時危険な目に遭うか恐ろしくて。  村で手伝いに忙しなくなってからは、考える余裕もなかったけれど。

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