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第17話

 以後数週間ほど、ファングは一日中バルドに付きっきりで、「監視者として徹底的な見張り」という名目の「単にバルドの生活が気になるがゆえ」の同行をしている。  けれど夕飯の時間になると、わざわざバルドの家で手料理を食べてから夜更けのパトロールを始める。  そこはファングの同行者として、バルドも付き従っている。  今のところ怪物が出るような気配もしないし、バルドも移り住んでこのかた他の種を見たことがない。  この辺りにゴブリンが出たなんて……オーク、つまりバルドのことを誰かが見かけて密告したなんて……王都の人間の誰かが賞金欲しさのため、たちの悪い噂を流したのではとすら思えてくる。 「今日も何も収穫なし、か……」 「ファングはそれがお仕事だし気になるみたいだけど……何にもないってことは平和の象徴だから、良いことだよ」 「それはそうかもしれないが、お前は警戒心が薄すぎる。俺が本来ならば敵の騎士であることすら忘れたような阿呆面をして」 「え……あ……でも、バルドはファングだけは他の騎士様とは違うと思ってる、から……」 「ものの例えだ。まるで俺がお前を贔屓をしているような言い方をするな」  そう言うなら、監視は仕方ないとして、夕飯くらいは別々でも良いんじゃないか。  バルドの家から共に出てこっそり巡回した方が効率は良いけど、だからって夕飯まで一緒なのはちょっと違うんじゃないか。  ファングは事前に一ヶ月ほどは滞在する気で宿屋や酒場にも前払いしているようなので、オークのタダ飯にありつこうなんてケチな性格だとは思えないし。  バルドじゃなかったら、そうして時間をかけて信用させ、隙を見て毒殺を狙う怪物がいるとも限らない。  毎回、食事を出すたびに「うまい」としみじみ言われるものだから、ずるい。  そんなことを言われたら、毎日腕によりをかけて作りたくなってしまうじゃないか。  警戒心が薄れてきたのはファングも同じではないか。  じゃあまた明日、と松明を片手に村へ戻っていくファングをバルドも洞窟入口で見送ってから、片付けを済ませ就寝に入る。 「バルド……バルドゥイン、ここにいるのか?」  とても小さいしゃがれ声が洞窟内に響いて、バルドはハッと目を覚ました。  ファングや村の者ではない来客が、フードを被って身なりを隠し、焦った様子で辺りを見渡している。  バルド以外誰もいないと確認するや否や、フードを取り払う。  そこにいたのはゴブリン族の長、ローゲだった。数年ぶりの再会だ。

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