19 / 56

第19話

 しかし……なぜかとんでもないことに加担してしまった気がして、気が休まらない。  やることとは? やはりジークフリート家、もといファングへの復讐? けれどゴブリンが歴戦の騎士に勝算がないのはローゲ自身が充分に理解しているはず。  それなら……いったいローゲは何をする気なんだ。  例えばゴブリン以上に別格の強さを持つ異種族と一時共闘……ジークフリート家の末裔を倒すためなら、ありえなくはない、けれど……。  こうなってしまってはファングの方にも伝えておいた方が良いかと、朝を待って村の宿屋に宿泊しているファングの元を訪れた。 「ようやくゴブリンが出ただと? それならさっさと言え。早く倒してこんな田舎おさらばするとしよう」  ファングからすればその程度いつものことのようで、まだ眠そうにあくびをしながら身支度を始めた。 「朝っぱらから雑魚退治なんて……腹が減っては戦はできぬ、だぞ。その様子ではまだ切迫する状況ではないのだろう? ならせめて現地に着くまで携行食でも食わせろ」 「ま、待って。今のゴブリン、危険かも……」 「フン、あんな小さい奴にこの俺が負けるとでも?」 「違う、ローゲってゴブリン……ファングのお父さんを憎んでる。家族を殺されたからって。だから、きっとファングのことも……」 「父上の代からの因縁か……騎士を生業にしていればそんなものよくある。父上は父上。俺は関係ない、ただの逆恨みではないか」 「だけど……! たぶん……なにか怖いことしようとしてる……。ファングでも、危ない」 「おい、このポンコツオーク」  あからさまに不機嫌なファングにキッと睨まれる。 「俺を甘く見るな。そもそも……お前のことだって、皆に免じて見逃してやっているだけで、やろうと思えばいつだって殺せるということを忘れるな」  そう吐き捨てて部屋を出て行った。  やはりオークは所詮オークなのだろうか。何もしていなくても、それでも、存在しているだけで悪なのだろうか。  怪物は生きていてはいけないのだろうか。  あの騎士長であるファングが手料理を食べてくれたり……私的なことを話してくれたり……巡回中の雑談でさえ立場も忘れて話に華が咲いたこともあった。  そもそも、村民の言うことなんて聞かず冷酷に殺すこともできたのにしなかった。他愛もない会話をしてくれていた。  優しく……してくれた。 「ファング……」  ほんのわずかにでも、心を開いてくれたのかもと……無害で無知なオークのバルドは勘違いした。  ファングは初めから言っていたじゃないか。  『怪物は生かしておく価値がない』と。  だからこそ、ショックは大きく、しばし佇むしかなかった。

ともだちにシェアしよう!