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第22話

「…………わかった。バルドも戦う。全力でファングの支援をするよ」 「よし。なら俺の合図で行くぞ。三、二、一……走れ!」  そのまま互いにゴリアテに向かっていく。  騎士と言えど人間だ。古代のように魔法を使える訳でも、空中を飛び回ることもできない。  ただ、常人には真似できない体力と、力強さと、脚力と、そして何よりも……死さえ物ともしない勇気を持っている。  バルドが命令通りに自慢の太い腕で足首に鉄拳の集中砲火を浴びせている間、腕にジャンプしたファングが正確に神経を切断しながら腕を伝って走る。  相手は巨石のようなものなのに、ファングのノートゥングはフリードから……いや、代々の騎士から受け継がれた、こちらも選ばれし存在しか持つことを許されない特殊な剣なだけあって、ゴリアテを覆う強靭な皮膚など屁でもない。  ありえないスピードで駆け上がったファングは、既にゴリアテの肩にまで到達していた。 「クソッタレがあっ! 大人しく寝とけぇええっ!!」  肩関節にノートゥングを突き刺し、腱板を刺し貫く。恐らく断裂したのであろう、ゴリアテが叫ぶ。 「人の耳元でうるさいんだよっ! 黙ってろ化け物が!」  そのままうなじを斬りつつ、その勢いのままジャンプしてもう片方の肩へ着地する。こちらも切り裂いて両腕を不能にするつもりだろう。  しかし、ゴリアテも苛烈な攻撃を受けて大人しくしている訳じゃない。  本能的に虫を払うように大きく身体を揺すったせいで、肩上に立っているファングが体勢を崩し、振り落とされそうになる。  さすがのファングも人間だ、もしもこの高さから落ちたらただでは済まない……。  バルドが受け止めようにも、いかんせん戦闘慣れしていないがゆえに、距離感がわからない。  運良く森林に放り投げ出されて木々が衝撃を和らげてくれたとして、大怪我なら良くて、最悪その場で死……。  そんなことが脳裏に過ぎった瞬間、バルドは戦慄した。 「ぐっ……ううっ!」  ファングは剣を肩に突き刺して何とか堪えているものの、そう長くは持ちそうにない。  ゴリアテが暴れるたび、足もつかずに今にも飛んでいきそうになる。危なっかしくてとてもじゃないが見ていられない。 「こ……の暴れ馬よりもたちが悪い一つ目野郎……! バルドっ……! こいつの顔面に向かって石を投げろ! 何でもいいっ、ただそれだけでいい!」  今は戦い慣れたファングの言うことを全て聞いた方が、お互いの生存率はぐっと高まるはずだ。  バルドはできるだけ周辺にあった大きな石を手早く集め、ゴリアテの顔に向かって力を振り絞って投げた。  距離もあるので全てを当てられたという訳ではないけれど、たまたま額にヒットした瞬間、ゴリアテがぐらついたように見えた。  何の殺傷力もないただの石ころだと言うのに……ゴリアテはまるで顔だけは守らんとするべく、防御体勢に入った。

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