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第46話

「あ、ああああああ赤ちゃん……!?」 「日頃あれだけ愛し合ったしな……。フリッカ様もバルド相手ならばとお許しくださったのだろう、と思うことにする……。お、俺だって、子供の頃は赤子は良い子にしていればコウノトリが運んで来てくれる、というおとぎ話を信じていたから、実際の子作りを知った際にはそれはもう倒れそうにだな……」  あのファングが繁殖行為自体を知らなかったとは、なんて初々しい時期もあったものか。  あらゆる悦楽を知りたいと言わんばかりにバルドを求めてきたのはその反動か。  ファングともあろう者がオスの象徴を使わぬままでいるのは、もったいないような気もするけれど、今さら誰かとの間に子をもうけられても困る。  というか、それこそ逆算するならば……数ヶ月前……ファングが遠征という名の泉から戻った後、朝までお互い疲弊するほどに精子を搾り尽くされたことがある。  ファングの様子が変わったのはそれからだ。あの時の子だろうか……。フリッカ様の祝福が真実ならば、ありえなくはない。 「えっと……フリッカ様がジークフリート家にも崇められてるのは、バルドでもわかったんだけど……オスが赤ちゃん生めるの……?」 「そんなの、あくまで伝説上のフリッカ様に聞けることなら聞きたいさ……! だが、泉で授かったのなら、出産時もまたフリッカ様の御前というのが通説らしい。とても神秘的な場所だったし……恐らくあの泉には魔力が込められているのだろうな」  ともかく混血種になるのであろうが何だろうが、バルドとの子を授かったのであれば、ジークフリート家や、ひいてはいつの日か人間と共存してほしいという意味でオーク族の血を絶やすこともなくなるし……今にも舞い上がってしまいそうだ。 「あ……もしかして、俺のわがままだと呆れているか? 子供は……欲しくなかったか? そ、それなら……どこまでも俺の独りよがりということに……」 「ち、違うよ! バルドは子供、大好きだし! い、生き物が子孫を残そうとする本能的なものなのかはわからないけど……バルドも……ファングのこと好きすぎて……孕ませたいって思ったことはある……。でもいざできたら、驚きの方が強かった、だけだから……。すごく嬉しいよ、ファング」  ファングとの赤ん坊なんてどれだけ大切な存在になるだろう。考えただけでワクワクが止まらない。  早くその小さな身体を抱きたい。自由に好きなことをさせてやりたい。  本人が嫌なことは強制したりせず、無償の愛をこれでもかと注いで育ててやりたい。  手のかかる赤ん坊から、立派な大人になるまでも、全て見守りたい。  もちろん、ファングと二人で。

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