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第47話

「そ、そうか。だが、オークは人間と違って成長こそ早いんだろう? だから……すぐにでも婚礼の準備をしないといけないな。オークと人間の混血種……どんな感じか楽しみで仕方ないっ♡ まあ……もし虐められたりするようなら、俺がそいつらの家や種族ごと潰してやる」  怪物が蔓延るこの時世に、名実共にフリードの後を継いで英雄と化したファングの結婚式など、それはそれは盛り上がるだろうけど……。  その相手はまだまだ毛嫌いする者もいるオークであるバルドで。  しかも妊娠しているということは、ファングが花嫁になる訳で。  め、めちゃくちゃだ……。  でもずっと、ファングはこんな感じだった。誰にも相談せず勝手に物事を決める、わがままなところがある。  そこも嫌いになれないどころか、とても愛らしいし、そうして振り回されるのは、新鮮なことばかりで実は結構好きだ。 「……大丈夫。バルドなら良い親になれる」  実の父とローゲのことが一瞬チラついたが、彼らとバルドは決定的に違う。  バルドは人を慈しみ、命を大切にし、愛を育むことができる。  良い親……良い夫婦……また勉強することが山積みだ。 「んっ、あ♡ お腹の中でポコポコって動いた♡ 赤ん坊も……バルドのことをちゃんとわかってるみたいだ♡ ほら、触ってみてくれ」  妊婦のお腹を触ったことなんてない。  固唾を呑みながら、そーっと大きな手のひらでファングの腹を撫でさすってみる。  ファングの下腹には妊婦の証である刻印、それも混血であるからか複雑な……まるで不死鳥が大きく翼を広げているかのような、炎のように赤いものが浮かび上がっている。 「そうそう、いい調子だ……って、ぐっはぁ!!」  突如としてファングが叫び、身を震わせ始めたので、もしや強く触ってしまったか、お腹の子に何かあったのかと、脊髄反射で手を引っ込める。 「ちょ……すまん、こ、こいつ……蹴りをっ……! くうぅ……なんて凄まじい足力……確実にバルドの子だ。性別まではわからないが……男児だろうか……」  そういうものなのか……と納得しかかって首を横に振る。  人間でさえ妊娠と出産は母胎に負荷をかけ、命懸けの大変なものだというのに、バルドの子は胎児であるのに元気すぎる。  もっと育って動き回って、臨月まで大きくなったら、ファングでさえ動けないほどないんじゃないか。  しかしファングの胎内に新しい命が芽吹いていることはよくわかって、猛烈に感動した。親になるとはこんな気分なんだ。  バルドがファングと出会う前後も、楽しいこと嬉しいこと、つらいこと悲しいこと、並の人生では味わえないくらいに多く経験したけれど。  ここまでに人生最高の日はそうそうない。  ……いや、まだ、最高は取っておく。  結婚して、子供も無事に生まれ育つその時まで。 「ファングっ……。バルド、生まれてくる赤ちゃんのために……生んでくれるファングのために、これからもっと、責任持って頑張るね」  薬指に大きな指輪を嵌められながら、しばし産休に入る予定の騎士様と甘いキスを交わした。

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