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第53話

 ファングの意志を継ぐように、ウィングは差別など何のその、誰も文句が言えないくらいの実力を付け、訓練所を卒業する頃には成績トップで通過して見事なまでの騎士に成長した。  先代国王がよくファングとバルドの話をしていたというおかげか、現国王にも信頼され、無事に不死鳥にも認められ。  何かあればすぐに現地に駆け付け怪物退治に奮闘している。  バルドと同じように肉体とその力は人間を遥かに凌駕する屈強ぶりで、しかしファングの騎士道精神を何よりも大切にしている。  バルドとファングが訪れなくなってからと言うもの、生き残りの怪物もまた子孫を残したり、新手がよく村を襲う機会が増えたとのことだった。  それは血の定めなのか、バルドが世話になり、ファングと出会ったあの村。  熟練の騎士となったウィングだが、バルドが昔暮らしていたという地域に来たのは初めてだ。  だが、感慨に浸る間もなく、怪物は現れる。  なかなか遭遇するのも珍しい大型モンスターを前に、背負った剣をそろりと抜いて片手で構える。  それは上半身が鷲のような猛禽類のすらりとした顔立ち、かつ巨大な翼を生やしている。  下半身は獅子そのものの四足歩行に立派な尻尾という、正に怪物にしかあり得ない突然変異具合。  近辺の街や村から家畜の馬や牛などを攫っていってしまうことからも煙たがられているそれ。 「チッ……グリフィンか。ド派手にデカい翼生やしやがって。俺の名は両親が不死鳥から名付けてくれた神聖なものなんだ! なのに被りやがってふざけんなよテメェ!」  ファングが引退した際に譲り受けた伝説の剣、ノートゥングは、また主を変えつつも新たな騎士の手助けに大いにその力を発揮してくれている。  ファングのようにかなり鍛錬してきた騎士でも、人間である以上はここまでの大剣は両手でないと扱えないが、バルドの腕力も継いだウィングには、片手で充分だ。  グリフィンを狩ったのは初めてのことではない。  しかしだからこそ、滅多に出くわさないためか、固有種によっては攻撃パターンが読めない。 「さてさて……お前はどう来る。馬鹿正直に俺とタイマン張るか、余計な真似でもしやがるか、のこのこ帰るか」  怪物ながらに、ウィングは身軽な戦闘スタイルをとる騎士と悟ったか。  グリフィンは後ろ足を踏み締めて、それこそ下半身の見た目の通りの猛獣のごとく力いっぱいにファングに体当たりしてきた。

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