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第54話
しかしウィングはその程度では動じない。盾も不要なほどの最強の剣・ノートゥングでグリフィンの攻撃を一心に受け止めていた。
「バーカ。俺は速さも力強さも防御力も、テメェらなんかとじゃ天と地ほどの差があるんだよ」
そうして、今度はウィング自身の力でグリフィンの身体ごと押し戻していく。
目にも止まらぬ速さで、グリフィンが何度ウィングを傷付けようと鋭いくちばしでついばんだところで、ウィングはそれをまるで大人と子供の剣術ごっこのように剣でいなしてしまう。
それには、グリフィンも体力の限界と、この人間は相手にしてはいけないという生存本能が勝ったのだろう。
逃げる気なのか、グリフィンは大きく後退し、羽を広げて宙へ浮かび上がろうとする。
「逃すかっ!!」
ウィングはあろうことか、力一杯にノートゥングをブーメランのようにして投げ付けた。
空中戦で苦戦したと聞いてから身に付けた、ファングとも違う騎士ならざる戦法であり、バルドの腕っぷしもなければできない、まるで一人で二人ぶんの連携技を習得しているようであった。
ノートゥングの刃先は迷いなくグリフィンの翼に向かい、生えている背の皮ごと削ぎ落とした。それにはかのグリフィンも大ダメージを負ったようで、飛べずに派手にすっ転ぶ。
円軌道を描いて戻ってきたノートゥングをしっかりとその手で掴むと、突進して距離を詰め、苦しみ悶えているグリフィンの片翼も斬り裂く。
グリフィンはもう虫の息だ。なんとか巣に戻っても再起不能である。
「怪物も、命は命……そんなこと充分すぎるくらいわかってる。でもなぁ……だからって誰彼構わず襲っていいはずがねぇだろうがぁあああ!!」
そうして激情をぶつけながらノートゥングを振り下ろし、筋や骨の引っかかりもなく圧倒的パワーで首を落とした。
討伐を終えたウィングの身体には、グリフィンの白い羽根が舞い、まるで天使が降臨したような神々しささえあった。
その一部始終を隠れながら見ていたのであろう村人たちが、ようやく恐る恐る姿を現す。
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