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第2話 どうだっていい話し
「あらっ、ヤダ!ついに登場よぉ〜?!赤嶺ちゃん!」
持ちビル一角にひっそりと店を構えるミックスバーでマスターがしなを作って見せた。
「うわっ。ママ、呼んだの?シンのセコム」
「出た、似非彼氏」
外野が騒ぐ様子も気に留めず呼び出した相手の席へと急ぐ。
「えっ?!マジで来たのかよ、赤嶺!お前バカじゃないの」
驚いた表情で自分を見上げると薄らと頬を上気させた先輩がスマホの画面を確認する。
「…酷いな。マスターがシンさんを迎えに来いって言うから」
「朝方4時にィ?朝から会議入ってんじゃねーの」
「いや、今日は午後イチだから平気…って飲み過ぎじゃない?シンさん」
当然の様に隣へ座るとウーロン茶が運ばれて来る。
「赤嶺ちゃん、車でしょ?はい、ウーロン」
「マスターありがとう…って、何で俺を呼んだんですか?」
隣は平然とウィスキーを飲みながら店の女の子と爆笑しているがこの際それは無視して尋ねた。
「だって、シンちゃんが…お持ち帰りされたら赤嶺ちゃん泣くでしょ?」
「あー…、例の男の娘ってヤツ?」
耳元で声を顰める相手にうんざりと隣を見やると見事に女に化けた店員がにこにこと屈託のない笑み(営業用)を向けていた。
「そうなのよ。だってまだアンタ達ヤってないんでしょ?」
「はぁっ?!何言ってんすか、マスター。俺とシンさんはそんなんじゃ無いっすよ」
「…なら、なんでアンタ飛んで来たの?」
「先輩だからです」
「ただの先輩の為に朝4時に起きて来る?」
「…付き合い長いんで。放っておけないんですよこの人」
着崩れた隣の男の肩を掴むと向かい合わせの格好でボタンを止め始める。
「んな、止めろ!赤嶺…!暑いんだよ」
「シンさん、ネクタイはまだしもボタンぐらい止めて下さいよ。いい年して恥ずかしい」
「はー?うるさいよ、バーカ。良いからお前はママと大人しく飲んでろよ」
尚も悪態を吐く様子にボタンをきっちり止めてやると有無を言わさず勘定を済ませる。
「店主が迎えを寄越したんだから、アンタそれ飲んだらもう帰りますからね?聞いてんですか、慎一さん」
「何でお前がそんな事、決めてんだよ!うるせーな」
「俺はアンタの後見人ですから、当然でしょ。何か文句あるんですか」
「……お前が勝手に言ってるだけじゃん」
「アンタが結婚してないからでしょ?将来ボケたらどーすんですか?」
「……弁護士に後始末させるから、平気だって」
「いや、その前に俺が後見人としてアンタの始末は済ませますから大丈夫です」
「やだ、赤嶺ちゃんてシンちゃんの終活まで心配してんの?!」
「本当に気持ち悪いわ、お前…」
「保護者ですから、俺」
まだ何事か言いた気な相手を無視してウーロン茶を飲み干すと相手のネクタイとジャケットを拾い店から出る様に促す。
「また来てね、シンちゃん、赤嶺ちゃん」
「はーい。ご馳走様、ママ!またね」
「ありがとうございました、おやすみなさい。マスター」
店主に見送られてバーを後にする。
「シンさん、起きて下さい…着きましたよ」
案の定、車で爆睡してしまった相手を寝室まで運ぶ羽目に陥いる。仕方無く相手の衣服を脱がせベッドに寝かせてやる。
「シンさんの匂いがする」
気持ち良さそうに眠っている相手の隣へ潜り込むとアラームをセットして目を閉じた。
END
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