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第12話 嬉しすぎるとか
「……何でって……大したことじゃないよ?」
「ん。何?」
「……オレ、Ω、苦手で」
「苦手?」
「……すごい迫られること何回もあって、なんか嫌で。そういうんでなくても、オレが望んでないのに噛んじゃったりするの怖かったし、そんなんで番でずっとなんて無理だと思ってた。……α同士とかβと恋するのは、なんかちょっと違う気がしてて。好きな奴もいなかったし、体だけ、とかも好きじゃないし」
「――――……」
「いつか、可愛いΩを好きになったら、とか思ってたら、今になってただけ……」
今更、颯に嘘をついても仕方ないので、正直にそう言うと。
颯は、ぷ、と笑う口を、拳で隠した。
「っ笑ってンの、バレてるからな……っ」
むかつく……と言うと。
ギシ、とベッドに腕をついた颯に、押し乗られて、腕の中に囲われて、上から見つめられた。何か、すっげー楽しそうにニヤニヤしてて、ムカつく。
「すっげえ可愛いなと思ってるだけ」
「馬鹿にしてんの? そんなことしてて、経験ないまま急にΩになんかなっちゃっ……」
ちょっとムカつきながら言ったオレは、唇ごと、言葉を奪われた。
この数時間で、覚えさせられた、颯とのキス。ゆっくり絡んだ舌が、離れた。
「オレ、お前のこと、馬鹿になんてしたことないし」
「……えっ? いつも、冷めた感じで小馬鹿にしてたじゃん」
「は? 慧が突っかかってくるから、相応の話し方してたけど、馬鹿になんてしたことはない」
「え。……そうなの?」
「誰より認めてるって、言ったよな」
……むむ。それは、ちょっと……。いや、かなり。
嬉しすぎる。……嬉しすぎて。なんか。また、体温が上がる。
「お前のそれ――――……ほんと、ヤバいな……」
自分でも分かる。ぶわ、と舞う、オレのフェロモン。
すぐに熱くなって応えてくれそうな、颯。
「ていうか、今の話も……ほんと、可愛いしかねーけど」
ふ、と笑う颯の唇が、また重なってくる。
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