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第15話 オレの初めては。

「慧、起きれるか……?」  めちゃくちゃに抱かれて、ぐったり寝落ちてたオレは、颯の声と、いい匂いに起こされた。  いや、むしろ、いい匂いにばっちり目が覚めた 「ん。ここで食べよ。だるいだろ」 「ありがと」  トレイに乗ったご飯。オシャレすぎるプレートに、ご飯と照り焼きチキンみたいなのとサラダと、半熟目玉焼きが乗ってた。 「超美味そう! 颯が作ったの?」 「一人暮らしだし当たり前」  く、と笑って、颯がオレの頬に触れる。 「軽いものにしようかと思ったけど。がっつり食べといて」 「? うん。何で?」 「絶対また抱くと思うから」 「――――……っ」  ぼぼ、と真っ赤になる。  なんていうか。  体の衝動で、もうどうしようもなく、抱かれるのと。  素面の時に、そんなことを言われるのとは、全然違う。 「……真っ赤」  ぷに、と頬をつまんで離しながら、クスクス笑う颯は。……何だか、もう、今までの関係が嘘みたいに、なんか、甘すぎて。  何なのこれ。もう。意味分かんないぞ。  オレはその甘い雰囲気を吹き飛ばすように、いただきます!と言って、鶏肉をほおばった。 「……ん。鶏肉、うまーい! 天才、颯」 「それは良かった」 「何で料理できんの?」 「できないの?」 「……オレも一人暮らしだからちょっとは作るけど、料理とは呼べない気が」  言うと、颯はクスクス笑った。 「教えてやるから一緒に作ろ」 「え。……あ、うん」  頷いて、もぐもぐひたすら食べながら、一緒に作ることなんてあるだろうかと、考える。  ……オレ達、二人で居るのすら、初めてだからなぁ。  ……ていうか、二人で初めてしたのが、これって。  オレの初めてを。いや、ていうか、そもそもオレが捨てる筈だった初めては童貞の方で。  ……こっちは認識する暇もほとんどなく、オメガとしての初めてを、颯にささげてしまうとは。もうほんと、今でも全然意味が分からない。意味は分からないけど、抱かれた記憶と、その時の、颯の様子は、まざまざと、残っていて。 「……何? また赤いし。つか、誘ってる?」  だめだ、これ。考えると、自分からフェロモンが。 「食べてからな?」  ふ、と笑う颯に、よしよし頭を撫でられてしまい。  なんか、心臓がバクバクするのはなぜだ。  ていうか、撫でるなよ、気安く!  全然慣れてないんだよ、素面の時の、その感じ……。

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