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第47話 旦那さま
恋。
結婚してる相手を好きなのって恋って言うのか?
ていうか、あれだよね。普通は恋して、色々あって、結婚するから、なんか最初から違うんだよね。
恋、かぁ。……恋?
さっき考えてた時の赤面はやっと収まったけど。
やっぱ、恥ずかしいのに変わりはない。んー、颯に恋! はず!!
「まあ慧が何を考えてたかは置いといて」
健人がからかうようにオレを見ながら、そう前置いて。
「さっきの話だけど、男はΩとも付き合ってなかった颯が、よく男の……しかも元αのお前を誘ったよな」
「あー……そう、だよね」
「しかも、ただのαってだけじゃなくて、慧ってとこがな」
昴の鋭いツッコミが重なる。
「あの日さ、慧、ちょっと体調悪いからベンチで休むってオレらと別れたじゃん?」
「うん。そだね」
「その時、もうヒートだったの? ……って、違うか、オレら、分かんなかったもんな」
誠の質問に、あの日を思い出す。
あの日。確かに皆と居て、すごく体調悪くて、階段上って教室に行ける気がしなくて、少し休んでから行くって言ったんだよな。で、颯に会った。
「ううん。皆と居た時は、体調悪いなって感じだけだった」
「じゃあヒートのせいではないのか」
「完全ヒートって感じじゃなかったんだよ、なんか中途半端? ちゃんと話して考えてそうなったんだよね」
苦笑いで答える。
なんか、ヒートのせいで勢いでそうなったみたいな、それが一番皆は、納得いくんだろうなぁ。まあ、分かるけど。
食べながら考えていると、仲間が数人一緒にやってきて、周りに座った。
「おー、慧、引っ越した?」
「……引っ越した。ていうか、皆同じ確認するんだね」
笑ってしまうと、そこに居た全員、可笑しそうに笑う。
「だって、お前と颯だぞー?」
「引っ越しってなって、引っ越した途端に喧嘩別れしてくるかなーってさ」
「何だよ、それ」
「皆で、先週話してたんだよ」
むむ。なんだよ、それ。
と、ほんの一瞬思ったけど、オレは怒れる立場にはないような気がする。
オレだって、前のままのオレと颯が、結婚して一緒に暮らすなんて聞いたら、絶対信じないしな。はは。もう面白くなってきちゃったかも。
まあいっか、いつか、ずっと居れば、分かってくれるだろ。
少しずつ、解いていこ、この頑なな、イメージ。
「あ、ここにお前の旦那さまも居たぞ、メニューんとこで会った」
「だっ……! 旦那さまってやめろよっ!」
慌てて否定しながらまたも顔に熱が走る。
皆がオレを見て、また、なんか、信じられない、みたいな顔をする。
……あ、旦那さま、なのか。確かに。まうそうなんだけど。
いやでも、旦那さまって!! 何それ、超恥ずかしい……!! ひえー!!
よくわからんけど恥ずかしい!
「なになに、なに真っ赤なのお前」
「超面白い、どーした、大丈夫?」
周りが超楽しそうな顔で、オレに迫ってきて、わーん、もう帰りたいー!と思った時。
「慧」
――――……あ。この超イイ声は。
くる、と振り返ると、朝まで一緒だった、超カッコいい奴が近づいてきていた。
あ。……「旦那さま」だ。
なんか離れてみると、超絶カッコいいな、颯。
なんかもう、独特。最上級のαしか出せない凛とした雰囲気。周りが一瞬で静かになった。
……オレ、よく颯に挑み続けていたもんだと、遠い遠い思考で、自分に感心しながら。
ぽけ、と見つめてしまう。
オレの周り、超騒いでたのに、一瞬で収まって、皆も、オレと颯の様子を伺っている。
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