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第54話 胸がおかしい

 食事を終えて、食洗器にお皿を入れてから、操作の仕方を教えてもらった。 「うちにあったのと大体同じみたい」 「じゃ平気だな」 「でもあんまり使わなかったんだよね。一人だから買ってきちゃうことも多くて。お皿ちょっとなら手で洗っちゃった方が早くて」 「そっか」 「でも二人分だし。ちゃんと作るなら、使った方が楽かも。覚えるね」  動き出した食洗器を見てて、立ち上がる。 「すごいお腹いっぱい」 「少し休んでから風呂にする?」 「うん」 「お茶飲む?」 「今はお腹いっぱいすぎて。出てからでいいや」 「OK」  颯がスマホを持って歩いて行って、ソファに座った。  ……オレは、どうしよっかな。  颯の隣に座る? テーブルのところ?  あ。いくつかのスマホゲーム。パズルゲームとか、仲間を集めてくゲームとか。最近ログインすらしてなかったかも。ちょっとやりたい。と思ったけど。どうなんだろ、颯はスマホゲームなんかしないかな……。  そういえば、颯の趣味とか、何? びっくりするくらい知らないな。  どんなテレビ見るんだ? 漫画読む? 映画とか。好きな本とか。  今まで休みの日、何してたんだろ。色んな奴らと遊んでたんだよな、きっと。  オレと二人きりになって、いいのかなぁ?  スマホ持ってるのは……誰かと連絡、とってたりするのかな。元カノとかって、連絡取ったりするタイプ? 友達多そうだしな。友達というか、信奉者みたいなのも居るし。颯のこと大大好きな奴ら。憧れてるみたいな。  そいつらにとったら、オレって、超邪魔なのでは。  ……むむむ。  まあそこらへんは、どうにもしようがないので置いといて。  まず、直近の問題。  オレはこの空き時間、どこに座ったら。  うーん、と真剣に考え始めた瞬間だった。 「慧?」  ふと、颯がオレを見た。 「こっち来いよ?」 「――――……」  きゅん。  ……あぁ。なんかオレの胸は、今、おかしくなってる。  なんな訳。  前なら、「来いよ」なんて言われたら、はー? お前が来いよ、えらそーに! とか言ってそうなのに。今は何。来いよと言われて思うのは、あ、そこ行って良いの? という、嬉しい気持ちという……。    自分に少し呆れながら、とりあえず颯も持ってるしと、スマホを手に、颯の隣に座った。ちょっと離れて、一人分スペースあけるような感じで。 「――――……」  無言でオレを見た颯は、オレの腕を軽くつかんだ。 「え?」 「もっとこっち」  ふ、と笑う颯に、また心臓が音を立てる。  ……なんかオレの心臓、誤作動がすごすぎる気がする。  こんなドキドキするところじゃないはずなのに。  颯に近寄って座り直して。  広いソファの真ん中で、なんだかくっついて座る。

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