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第67話 Ω会議(?) 3
「なるほど。発情期のときにするのかー」
皆に色々聞いて、なるほど、と頷く。
「全然知らなかった?」
「んー、巣作りっていうのをするΩが居るっていうのは知ってたけど。あんまり詳しくは知らなかった」
「……慧くんて、ピュアだよね。なんか、性っぽい話、しないもんね」
紗良がクスクス笑う。
「なんかうまく言えないんだけど、なんかそういう感じも可愛いって思ってた気がする」
「ピュア……?」
なんか口にすると恥ずかしいその言葉に、困ってると、奈美と啓太も笑いながら頷く。
……もうオレ二十歳も超えてるしー。お酒飲みながらピュアって言われてもな。と首を傾げつつ。
あ、そうだ。
「颯が言ってた、何使ってもいいって何??」
「うーん、なんかさ、巣作りって、人によって違うから。αの匂いに包まれたいっていうのが基本だけど……どれにそれを感じるかは、違うでしょ。αが良く持ってるものとかさ、匂いが強いと感じるものとか。洋服とかが多いみたいだけど。他にも色んなもの、持ち込んで、皆それぞれらしいよ?」
なるほど、と聞いてから、ふと思いつく質問。
「颯の、何使ってもいいってわざわざ言うのってさ、他の人は使っちゃダメとかいうものあるの?」
「あー。基本的にさ、ヒートの時、番が居なくて、自分を慰める時に持ち込むもんだから。……汚れちゃう可能性、あるでしょ」
こそこそ、と小さな声で言った啓太に、首を傾げる。
「……汚れちゃう? ――――……あ。そういうことか」
最初意味が分からなかったけど、ヒートで番が居なくてなぐさめる……がつながって、やっと分かった。
自分で聞いときながら、ちょっと恥ずかしい。
「……それでさっき皆、颯が優しいって言ったのか」
なるほど、ふむふむ、と頷いていると、皆クスクス笑う。
「だって汚しても壊してもいいって言ってくれてるわけでしょ」
「優しいよねぇ」
……確かに。
そう思うと、こないだは、なんか普通に頷いてしまったけど。
持ち物何でも全部、好きにしていいよって言ってくれた颯は。
優しくて好き、だな。
なんかここに居ないのに、ふわふわ、幸せな感じに浸ってると。
啓太が横でクスクス笑いだした。
「巣作りの仕方、話し合ったの初めてなんだけどオレ」
「ねー、いつか番になったら自然とするんだと思ってた」
紗良も頷いて、そんな風に言う。
ん、と考えてから、皆と順番に視線を合わせた。
「なんかその自然と、Ωのする何か、みたいなのがさぁ。良く分かんないっていうかさ」
そう言うと、「そっかー。まあでもそうかもね」と紗良。
「今までずっとαだったもんね。しかも、あんな人と張り合ってるような」
奈美もそう言って、ふむふむと頷いてる。
「慧は、Ωになったことに、葛藤はないの?」
「……葛藤?」
「世の中のさぁ、トップ階級のαだった訳だしさ? ……ただなんか、慧見てると、ふわふわしてて、全然平気そうに見えるんだけど」
啓太の質問に、オレは少し考えてから。
「うん。なんか、平気かな。……って、これでΩになったから嫌なんて、オレが言ったら、皆嫌でしょ?」
そう言うと、皆、んー、と苦笑い。
「でもαからΩに途中からってさ。最初からΩの私たちより大変かなーて思ったりもするんだけどね」
奈美がそう言って、オレをじっと見つめて、クスクス笑う。
「慧くんは、なんか……平気そうですごい」
「すごくはないと思うけど……」
……颯が居てくれたから、だし。
言わずに、でもちよっと微笑んでしまうと。
「なんか慧くんって、竹みたいだよね」
「……竹??」
「なんかしなやかでさ、強い風の時は曲がって揺れて、でもまっすぐ戻って、絶対折れないの」
「……なんかそう言うとカッコイイね」
ふふ、と笑うと、皆がじっとオレを見つめる。
「ていうか、慧くんはやっぱり、すごく可愛い」
「分かる」
「颯くん、絶対超可愛がってるでしょ」
「……っ……か、わいがってるかは……分かんないけど」
……可愛がられてる気はするけど。言えない。
思った瞬間。
「じゃなきゃ、フェロモン飛ばさないようにする方法なんか、考えないよねぇ」
ぷぷぷ、と奈美が楽しそうに笑顔。
「だよな。そんだけ、何か嬉しいことがあるってことだもんな?」
クスクス笑って啓太も、オレの背中を、ポンポンと叩く。
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