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第68話 Ω会議(?) 4
何だか色々からかわれながら、でもΩのことを色々聞きながら、楽しく飲んでいたのだけれど、ふと、啓太がオレを見つめた。ちょっと今までと表情が違う。
「ん??」
「あのさ、颯の元カノって、知ってる?」
「んと……何人かは噂は知ってるけど」
「一番最後の……慧とくっつく前の子、分かる?」
「髪の長い子、かなあ……?」
「あぁ、多分そう。Ωなんだけど、由緒ある家の子らしくて、結構気の強い子でさ」
「うん」
「別れるのも納得してなくて、本当はよりを戻そうとしてたらしくて」
「……あ、そうなんだ」
それは初耳。
あれだよな、颯がオレの匂いを感じて、別れることにしたって言ってた……その時の相手の子かな。
「でも慧と番になって、結婚しちゃったから、諦めはしたらしいんだけどね」
「うん」
「ほんとは颯と結婚したかったみたいで」
「そうなんだ……」
……まあ分かる。
颯と付き合って、颯が優しくしてたなら……別れたくないって、きっと思うと思うもん。
「だから、慧のことあんまりよく思ってないかも」
「……そっか。ん、分かった」
「藤嶋美樹 って子。ちょっと気を付けな?」
「んー気を付けるって言っても……」
でも別に何をしてくるってこともないだろうし。
……二番目に番いたいとか、もし言ってきたとしても、颯は、オレだけって言ってくれてたし。
大丈夫、かな。うん。
「とりあえず、そういう人が居るのは覚えとく。ありがと」
頷くと、奈美もちょっと苦笑い。
「モテる人の奥さんは、大変ね」
「……そう、だね」
「まあでも慧くんも人気だったけどね」
クスクス笑う紗良に肩を竦める。
まあオレ、付き合ってないしな。そういう心配はないな。良かったかも、とふと思う。
彼氏が変性でΩになっちゃって、αと番いました、なんて、彼女に言えないもんね。良かった、オレ、フリーで。
「颯くんて一途な感じするよね。αの時も、二股とか、遊んだりしてる噂は聞かなかったし」
「ね、そこは好印象だったよね。でも私は近寄りがたくて無理だったけど」
と奈美が苦笑い。
確かに颯って黙って立ってると、冗談とか言ったら冷たい視線を送られそうな感じはするよな……。分かる、近寄りがたいの。ていうか、オレはそういうのも、ほんと、かっこつけやがってーと燃えてたような……。ああ、なんか、何度思い出しても燃えてつっかかってるアホなオレがちょっと恥ずかしい。颯、忘れてくれていいんだけど。
……でもなんか颯は、あれが可愛かったって言う。
謎すぎ。
颯、中身は、顔と一致しないのかな、なんて思っていると。
「αは、番、何人でも作れるもんね。結婚は一人だけどさ。そういうのは、やっぱりちょっとは嫌だよね」
啓太の言葉に、「それ、すごくやだよね? ちょっとじゃないよね?」と返すと。
三人はクスクス笑う。
「でも、そこらへんは、Ωってちょっとは納得してて。そういうことは普通にあるって認識かも」
「ええ、そうなの?」
「うーん。まあもちろん一途に愛してくれたらいいけど、たとえばすごい社会的地位が上のαとかは、子を残すとか色々あるみたいだし。財力があって、生活守ってくれて、ちゃんとそれぞれを愛してくれるなら、ありっていうΩも結構いると思うよ」
「えー。そうなんだ……」
そうなのか。
そこはちょっとカルチャーショックだ。
……なるほど。
社会的地位が上のって、颯じゃん。
もしかして、颯が、オレだけだよって言ってくれたのって、すごいことなのか?
なんかオレは、自分の考え方があるから、普通のことだと思ったんだけど。
……ちょっと颯といつかまた話してみようかなぁ。
子を残す、とか。颯だけの問題じゃない訳だし。でもやだけど。颯が他の奴にそういう意味で触るなんて。
…………はっ。
子を残すって。
オレと颯の子も残すってこと?
……そうだった、オレ、Ωだから。そうだ、こないだも、妊娠しないようにって薬飲んだじゃん。
そうだ、オレ、妊娠できる体だった―!!
えーオレ、いつか赤ちゃん産むのか。
お母さんになるの?
えー、どうしよう、出来るかーー?
ああでも、颯とオレの赤ちゃんは、可愛いに違いない……。
って、いや、何言ってんの、オレ。パニックなのにすでに親バカになってるとか、意味わかんない。
今更、色々実感して、うーーーん、と頭を抱えてたら。
「どうしたの~?」
皆が笑いながら聞いてくる。
ぱ、と顔を上げて。困ったまま、笑ってる皆を見つめる。
「いや、あの……妊娠できるんだってこと、今更、実感して……」
「え、何で急に?」
「ていうか、今更?」
「慧くんーー」
啓太と紗良と奈美が同時に言って、ケタケタ笑い出す。
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