77 / 165

第77話 コンテスト

   なんとなく完全に眠るほどでもなく、颯の腕の中で、ぼーとしていると。 「慧、起きてる?」 「……うん?」 「学園祭、でさ」 「あ、うん。再来月のでしょ」 「またイケメンコンテストやるんだってさ」 「そうなんだ。……颯、去年、優勝してたよね」  まあ参加を聞いた時に、優勝するだろうな、と思ったけど。 「去年、慧は何で出なかった?」  何で出なかったって……うーん。理由があるとするなら。 「……颯と張り合うの疲れてた、からかも」 「まあ……中高ん時も勝ったり負けたりしてたよな」 「えーでも、オレが勝ったのは一回だけだよ。しかもギリギリ。皆好きだよねー、イケメンコンテスト」 「そーだな」  苦笑いで頷く颯。 「ほんと……慧とオレが一緒に居るのを、皆がなかなか信じないのも分かるよな。ライバルだったもんな、ずっと」 「うん。仲悪いと思われてたよね……犬猿の仲、みたいなことよく言われてた」 「まあ……その内分かるだろうから良いけど」  颯の苦笑いに、オレも、笑いながら頷いた。 「颯、出るの? 今年も」 「……オレ、チェスのサークルに入ってるのって言ったっけ?」 「ちぇす……? あ、あれ? ナイトとかキングとか」 「そう。それ」 「……なにそれ。なんか、サークルまでカッコいいってどういうこと」  むむむ、と何だか怒って颯を見上げると、颯は、ぷ、と笑う。 「何その怒り方」  笑いながら、オレの膨らんだ頬を手でぷにぷにと潰す。 「高校ん時週一でクラブ入ったろ。ボードゲームのクラブ選んだんだよ。その先輩達がチェスのサークル作ってて、たまに来てくれたらいいから入ってって頼まれて」 「うん。……それで??」  今イケメンコンテストの話じゃなかったっけ? 「イケメンコンテスト、優勝すると」 「うん」 「サークルに部室が貰えるんだよ」 「部室……ああ、サークルは、部室ないのか」 「そう。部は部屋貰えるけど、サークルはもらえないンだよ、本来は」 「うん。あ、その部室が、優勝するともらえるの?」 「そう」 「それで出たんだ? うわーお疲れ様ー」  そう言うと、颯はクスクス苦笑い。 「推薦者、サークルの先輩だからな」  それを聞いて、オレはふと思った。 「ねね、それ、今年、オレが推薦してもいい?」 「慧が?」 「推薦文とか書くんでしょ? オレが書くー」 「まあ、いいけど……サークル名はチェスって書いといて?」 「うん、分かった。楽しみー。颯また優勝するかなあ」  うきうき楽しみになりながら言うと、「慧は出ないんだろ?」と聞かれる。 「出ないよ、颯と戦うことになっちゃうじゃん」 「慧が出ないなら、オレ、勝てるんじゃねえの?」 「……んん? そう、なの?」 「慧以外に負ける気しないし」 「……オレって、そんなに、イケメン?」 「負けたことあんの、慧だけだし」  ……じっと颯を見つめて。  良く勝てたなあ、ギリギリとはいえ。  なんてしみじみ思う。  

ともだちにシェアしよう!