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第78話 颯のいいとこ

「あっでもさ、一年にすっごく美形のα入ってきたって、聞いたことない?」 「ある。つか、見かけたことあるよ」 「へえ~、どんなだった?」  どんなって言われてもな、と颯が笑って、「まあ、美形だったけど」と言うので。 「もしそいつもイケメンコンテストに出てきたら、颯さんは勝てますか?」  そう聞いたら、クスクス笑って、見つめられる。 「慧の推薦文が良ければ、勝てるんじゃねえの?」 「えっ、そこ重要??」 「さあ? 大事かも?」  颯は、ふ、と笑って、そんな風に言ってくる。 「えーオレ立候補したけど、何も考えてなかった……颯のいいとこなら、いっぱい書けると思って……」 「――――……」 「何書こう~。まだ時間あるよね?」 「来月くらいかな」  言いながら、颯はオレの脇に手を入れて、よいしょと上に持ち上げた。枕にとふ、と寝かされて、ん? と上向くと、「キスしていい?」と聞かれる。 「え。……うん。いい、けど」  なんだか、ちょっとその気っぽい颯の顔。  急になんだろう、と思いながら見つめていると、顔の横で、手を繋がれる。  うわ。照れる……。  一瞬でカッと赤くなったオレに、両手を繋いだまま、颯の顔が斜めに近づいてくる。 「――――……」  柔らかく、優しく、触れる唇。 「……お前、何でそんな、可愛いのかな」 「――――……?」  何が。どれが……。  颯の可愛い、は、何をそう思うのか、よく分かんないことの方が多い気がする。 「――――……オレのいいとこって、何?」  ちゅ、と唇にキスされながら、聞かれる。 「ん……?」  見上げて、聞き返すと、颯は、ふ、と微笑んだ。 「さっき言ったろ。颯のいいとこなら、いっぱい書けるって」 「え。…………あ」  言った。かも。  ……あ、それ。可愛い、て……? 「ん、ン」  ちゅ、ちゅ、と、唇や頬にいっぱいキスされて、恥ずかしすぎて、ぎゅ、と目を閉じる。顔の横で、両手をしっかり繋がれてるから、顔ちょっとしか背けられないし。 「そういうのぽろっと言って、自分がそういうのを言ってることに全然気づいてないのが、すげえ可愛いんだよな……」 「……?」  今言ったの良く分かんない。 「……気づいてないのが、可愛いの?」 「そう。自分が結構すごい殺し文句的なこと、言ってるのに、いっつも慧は、気付かない」 「……オレいっつも言ってる?」  そんな恥ずかしいことしてる? つか、さっきのって、殺し文句って言うの? 「……いい、気付かなくて。そのまんま言ってろよ」  クスクス笑いながら、颯はオレにキスの嵐。  わーん、なんかくすぐったいし、恥ずかしいし。これなら、思い切り、口にキスされた方がいいんじゃないだろうか……。  多分、真っ赤になって、ぎゅう、と目を閉じていると。  颯が、ふ、と笑う気配。  目を開けると、手が解かれて、頬に触れられた。 「……キスしよ。慧」 「――――……」  なんかオレを、優しく見つめて、キラキラする瞳。  またキュン病が。  ……もうキュンキュン病。  胸が、ドクドク、うるさい。 「……颯が勝てるように、頑張って書くね」  言ったら、颯、一瞬キスしようとしてた顔を引いて、オレをまじまじ見つめると。ぷ、と笑って、「頼んだ」と言うと。  今度こそ、ゆっくり、唇が、重なった。  まさかそこからまた抱かれちゃうとは思わなかったけど。  ……颯って、そういうの、強すぎるよな。  応えちゃうオレもオレだけど……。ていうか、颯に迫られて、応えないとか無理だな、オレ……。  なんかもう。  自分で言うのもなんだけど。  結婚して過ごす二回目の週末も。  なんだかとってもラブラブ(?)に過ごしそうな気がする。

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