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第79話 デートという言葉

 翌土曜日。  昨日色々しすぎてそのまま寝ちゃって、目覚めはちょっとだるすぎた。  目が覚めて少しもぞもぞ動いたら、ベッドの端に腰かけてスマホに触ってた颯が、オレを覗き込んできて、「おはよ」と笑う。  ……もうシャワーも浴び終えてて、普通に爽やかイケメン服装で、カッコよくなってるし。  対して、むにゃむにゃの寝ぼけのオレ。  ……いいのか、これで。そう思った瞬間。 「可愛い」  ちゅ、と頬にキスされて。  ……この、見なくても分かる、ボケボケのオレを見て、可愛いって何。  目覚めたばかりの頭に、爽やかイケメンの、甘いほっぺのチューは、謎すぎる……。しかも可愛いって言ってる。  颯って、目、悪いのかな。  眼鏡してるとこ、見たこと無いけど。コンタクト??  うーん、と悩んでると、ふ、と笑いながら、オレをヨシヨシしてくる。 「……起きてたの? 何時?」 「今十時。八時半くらいに起きたよ」 「起こしてくれていいよ……」 「昨日、無理させたし、ぐっすり寝てたから。用事ないし、いいよ」 「……でも」 「寝顔可愛いからイイ」  言いながら、スマホに触れた颯が、ほら、と見せてきたのは。 「……あ」  オレの爆睡寝顔の写真。 「可愛いだろ」  ふ、と笑いながら、颯はスマホを見てる。 「……っ勝手に撮っちゃだめなんだぞ」 「……可愛いし。誰にも見せないから」 「それとっといてどうすんの」 「どうもしないけど。慧がスマホん中に居るの、嬉しいし」 「――――……っっ」 「消さないとだめ?」  ダメって言いたかったのに。  そんな嬉しそうにスマホ見られると。……く。だめって言えない。  しかも、「だめ?」て聞かれるとか。  …………っっ。 「……い。い、けど。誰にも、見せない?」 「見せる訳ないじゃん。オレのだし」 「………………っっ」  なんかもう、突っ伏したい。  朝の寝ぼけのボケボケなオレに、なんかもうすっかり整ってる颯の、キラキラ攻撃は、結構きついというか、もう何も太刀打ちできないというか。 「慧、シャワー浴びてきな? どっかカフェでも行こうぜ」 「カフェ……?」 「デート。しよ」 「――――……」  ぽけ。 「な?」 「あ、うん」  頷いて、そのままベッドを出て、着替えを選んで抱えたまま。 「浴びてくるね」 「ん。待ってる」  颯の言葉に頷いて、とことことことこ、と、バスルームにやってきた。 「ん。……デート……」  って言った? いま。 「――――……」  服を脱いで、熱いシャワーを浴びながら。  ……デート。という言葉が、自分の中で、むくむく大きくなっていく。  颯と。  デート。  目が覚めてくにつれ。  なんか。嬉しい気持ちが、どんどん大きくなってく。  顔が熱いのが、シャワーなのか。デートという言葉のせいなのか。  分かんないけど。  なんか火照る。  ……って今更、デートなんかで、そんなん、なんないし!  とも思うのだけど。  ――――……めちゃくちゃ嬉しいなと思ってる自分がいるみたい。

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