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第82話 初デート 3
しばらくしてやっと顔の熱が引いてから、ちゃんと顔を上げると。
……颯はふ、と微笑んでる。
優しい視線は、嬉しいけど。ときめきすぎるオレにはちょっと。加減してほしい。
「何であんな真っ赤になったンだ?」
「……わかんない。なんか。颯が、初めてとか言うから?」
そう言うと、颯は、クスクス笑う。
「んー。でもほんと初めてでさ。……慧、オレのことどう思ってるか知らないけど」
「何のこと??」
「慧はオレのことモテるとか言うけど。告られて付き合っても、振られることもあったし。興味持てなくて別れるっつったら、すげーキレられるし。色々あったからな?」
「えっ、颯、振られるとかあるの?」
驚いて聞き返すと、颯は苦笑い。
「あるよ。普通に」
「何で??? 全然分かんない。颯を振るとか、居るの、そんな女の子」
「――――……」
じっと見つめられる。
「……居ないと思うの?」
「え。居るの? ほんとに」
「何で居ないと思うの?」
「え、だって……居ないかなって、ただ思うんだけど」
何でって何だ? へんな質問。
思わず首を傾げながら、颯を見つめ返していると。颯は、クスクス笑いながら。
「それは、慧が、オレと別れたいって、考えもしないってこと?」
「? うん」
普通に頷いたら。颯は何だかため息をついて、自分の前髪を掻き上げた。形の良い額と眉と、瞳。カッコイイなあ、颯。と思わず見つめていると。くいくい、と手招きされた。
「ん?」
「いますぐどっか連れ込みたい」
「え」
「て思うくらい、可愛いから」
こそこそと耳元で囁かれて。それから颯はまた離れて、「ほんと慧って困るな?」なんて言って、笑う。
やっと引いたのに、また顔が熱い。
つか。
赤面って、どーしたら止められるんだろ。マジで。
かぁっと赤くなっちゃうのも。
連れ込みたい、なんて言われて、連れ込まれた後のこととか、一瞬考えそうになると、またふわふわ、やばいフェロモン飛びそうになるし。
落ち着け―。オレ。考えるなー。
「……つか、今オレ何かした? 普通に話してただけじゃん……」
「オレが振られるなんて分かんないって思うくらい、オレとは別れたくないって思ってくれてるってことだろ?」
「――――……」
…………。
……確かに、言われてみればそういうことかも。うう。恥ずかしいなオレ。好きってまだ言えてないくせに、気付くと、色々言っちゃってるような気がしなくもないような……。まず先に好きっていうべきでは……。
いまこの勢いで……って勢いってなんだって、我ながら良く分かんないけど。
えっと、好きって。
………… 好きって。なんて言えば?
えっと……。
『だって、颯のこと好きだから、別れたいなんて思わないし』
……言うならこういうの……だと思うんだけど。
『好きだから』
えーと……
「……す……」
一文字で止まった。颯は、ん?と微笑む。
あ。今は無理そう。照れて死ぬ。
あとにしよう……。
今日はデートだから、言う機会、いっぱいあるかもしれないし。うんうん。
と、一旦、逃げることに決めた。
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