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第83話 初デート 4

 めちゃくちゃ可愛く飾られたパンケーキが届いた。 「……写真撮っていい?」 「いいよ」  思わず聞くと、クスクス笑う颯。  パシャパシャと数枚撮って、すぐスマホをしまう。 「もういいの?」 「うん。ありがと。食べよ?」  言って、手を合わせて、いただきます、を言う。 「普段は食べ物の写真とか撮らないんだけどさ」 「ん?」 「なんかこれすごい可愛かったから。友達に見せたい」  颯に連れてってもらったって。  ふふ~。のろけてやりたい。誰かに。……誰にだろ。うーん。のろけるのって恥ずかしいよな……まあでも写真位なら見せられる。仲良しって分からせてやるー。 「そんな可愛いの、食べそうには見えてなかった」 「ん? あ、オレ?」 「ん」 「そう? 昔から好きだけど、甘いの」 「オレの前では。甘いの好きなんて言いそうじゃなかったから」 「あー……まあ、そうかも」  頑張ってた自分を思い出すと、笑ってしまう。 「今は? こういう食べ物、似合う?」  ふと聞いてみると、颯はオレを見つめて、似合う、と笑った。 「颯には似合わないなぁ……食べれる?」 「一口なら」 「ん?」 「一口ならうまいで終わるけど」 「二口めはどうなるの?」 「……あっま、てなるかな」  苦笑いの颯。ふうん……?  ちょっと、悪戯心がむくむく。  どれどれ。 「はい」  おいしそうなところ、フォークですくって、颯に差し出す。 「ん」  抵抗なく食べてくれる。  せっせと、二口めをおいしそうなところ集めていると、颯がクスクス笑った。 「それ、食わせようとしてる?」 「うん。はい」  オレはめっちゃ笑顔で、はいどうぞ、としてみる。 「――――……」  苦笑いの颯が、もう一口。 「……んー。やっぱ、甘い」  ちょっと眉を顰めて、苦笑いの颯。 「何。そんなすごい笑顔で、二口め食べさせたかった?」 「もっと、いやーて顔すんのかなと思ってー。ちょっと見たかった」  意外と普通だったなーなんて思っていたら。 「そんな楽しそうな顔されてたら、そんな嫌な顔、出来ねーけどな」  クスクス笑う颯を見つめて、なるほど、と頷く。 「慧、気付いてないみたいだけど」 「うん?」 「オレに食べさせてる時、すっげー見られてた」 「ん? 誰に?」 「周りの人。イチャついてんなーて感じで」 「えっ」  瞬きしつつ、さりげなく、周りの雰囲気をを見ると。  確かに、なんか……女子の集まりとか、こっちを見ている気が。 「わー……ごめん、なんか」 「――――はは。何で謝んの? 全然いいけど」 「え、でも」 「すげー笑顔で、可愛かったし」 「…………」  颯は、ふ、と笑う。 「なんか、デートっぽいよな?」 「…………」  めちゃくちゃキラキラの瞳で、オレを見つめてくる。  もうほんと、何なんだろう颯。  デートっぽい、とか。喜ばれると。もうなんか。  オレがパンケーキ食べてて、颯がホットサンド食べてるだけなのに。  なんか自分たちの周りだけ、キラキラしてる錯覚があるぞ。なんだこれ?? 好きな人と居ると、こんな感じになるのか??  謎すぎる……。    なんかものすごい照れながら、オレは、頷いた。  

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